アイロンがけが苦手です。
なかなか皺が取れないばかりか、かえって、真新しい皺を作ってしまう始末です。
それに、たった一枚のブラウスの完成に、やたら時間がかかります。
たとえ、それだけ時間をかけたとしても、仕上がりが完璧ならば、達成感のようなものを味わえて、そこに幸せを見つけることもできるというもの。
しかし、私の場合は、完成に辿り着く前に、面倒になってしまい、「ま、いっか、これで」といった妥協点を見つけて、アイロンを置くので、まったくすっきりしません。
使っているアイロンが古いからではないのか――。
ある日、仕上がりの酷さを、道具のせいにすることを思い付きました。
確かに、何十年と実家で使っていた年代物で、温度を一定に保ってくれる機能が付いていません。そこで、熱くなると、プラグをコンセントから引っこ抜き、温度を下げて、下がり過ぎたら、またプラグをコンセントに差し込むという行為を繰り返さなくてはいけませんでした。
買おう。最新のを。スチームなんちゃらというのを、手に入れるのよ。
アイロンがけ最中に、何度もプラグを出し入れしなくていい品を。
熱い気持ちのまま、近所のスーパーの家電売り場へ走り、スチーム式のアイロンを購入。
説明書の指示通りに、水を入れた容器を、アイロンにセット。
プラグをコンセントに差し込み、しばし待機。
カチッと音がして、準備が終わっと判断。
試しにハンカチの上をすうーっと走らせてみると、蒸気が。
シューという蒸気の噴き出る音は、まるで「いい仕事しまっせ」と宣言しているかのよう。
どれどれ、と、ブラウスにあててみると・・・一気に皺が伸びていきます。
やっぱり、今までの仕上がりの悪さは、アイロンのせいだったかと、納得。すっきりした気分で、次々にアイロンをかけていきました。
と、最初にアイロンをかけたブラウスに、目が留まりました。
ハンガーにかかったそのブラウスには、皺が。
ぎょっとして、手に取ってみると、皺はブラウスの右前身ごろと背中部分に集中していると、わかりました。
アイロン台に、ブラウスを置く時、左に襟が、右に裾がくるようにしていました。
そして、右の前身ごろにアイロンをかけ、それが終わると、その部分を向こう側へずらし、背中部分にアイロン。それが終わると、また向こう側へずらして、最後に、左前身ごろにアイロンをかけるといった順で行っていました。
このため、右前身ごろは、一番にアイロンをかけられた後、アイロン台の向こう側に押し出されます。その時、構造上、真っ平らでいることはできないので、布は波を打つような状態になっています。そこに、次にアイロンをかけられた背中部分が、のっかってきますから、重さが加わり、新たな皺がブラウスにできてしまったのでしょう。
せっかく最新のアイロンを買ったのにと、がっかりしていた時、そうか、アイロン台を替えればいいのかと、気が付きました。
まな板のような、平らなアイロン台を床に直に置いて使っていましたが、以前、ドラマで、腰のあたりぐらいの高さのアイロン台を見掛けたことがあります。
ネットで調べてみると、ありました。
「これで、あなたもアイロン達人」と謳った品が。
スタンド式のアイロン台は、脚部がスライド式になっていて、10段階ぐらいの高さ調整ができるとのこと。
スタンド式であれば、右前身ごろは、よれないでしょうし、背中部分にのっかられることもなく、新たな皺はできないはず。
そこで、購入。

届いたその日に、早速使ってみると、やはり、いい。
袖口用の筒状のアイロン台も付いていて、細かいところもキレイにできます。
アイロンがけって、楽しいかも。
そんな風に思えたのは、どれくらいの間だったでしょう。
元々、面倒臭がりの私。
アイロンがけ待ちのブラウスを何日もクローゼットの中に置いておくぐらいなら、とっとと、クリーニング店へ出してしまった方がいいんじゃないかと、1度思ってしまうと、もうダメですね。
当然、コストはかかりますが、仕上がりは、私がやった時の何倍もキレイですし。
熱ってのは、冷めますね。
スチームの音に心を躍らせていたのも束の間、気が付けば、クローゼットの隅で場所を取る、邪魔者に。
結局、四、五回程度使っただけで、引っ越しの時に、処分してしまいました。
処分して約6年。
困ることはありません。
唯一、諦めなくてはいけなかったのは、薄手のハンカチを持つこと。
現在は、アイロンをかけなくてもいい、タオルハンカチを使用しています。
年末のことです。
ネットショッピングで、カードを使おうとしたら、使用できないとメッセージが。

そこは週に1度、日用品を購入しているショップで、いつもそのカードで支払っていましたが、そのようなメッセージが出てきたのは初めてでした。
そのショップのシステムトラブルかなんかだろうと思い、別の支払い方法を選択して、購入。
翌日になって、カード会社からメールが届きました。
一時的にカードを利用できないようにしてあるとのメッセージと、連絡してくれと電話番号がありました。
電話をしてみると、第三者によって、不正使用されそうになったとの疑いが発覚したので、一時的にカードの利用制限をかけたとのこと。
オペレーターが言う、会社名と使用されそうになったという日時は、まったく身に覚えのないものでした。しかも、海外で使用されそうになったとのこと。
びっくり仰天です。
カードを不正使用されるという事件は、耳にしていましたが、まさか我が身に起こるとは。
ですが、今回はカード会社が疑った時点で、止めてしまったので、被害はありませんでした。
胸を撫で下ろしたものの、気味の悪さは残りました。
カードを再発行してもらうことに。
ところが、到着までに2週間かかると言われ、絶句。年末年始を挟むので、通常よりも時間を頂戴する場合があると説明された時には、目の前が真っ暗に。
お正月といえば、ネット上の新春セールを楽しむというのが、恒例になっていました。
年末のうちに、ある程度絞り込んでおき、セール開始の日時を表にしておきます。
そして、本番は、スタート時間の十分前ぐらいにスタンバイ。
開始のゴングとともに、参戦。
調べてみましたが、私がよく見るサイトは、支払い方法がカードのみというところばかり。
ということは・・・今年のお正月のメインイベントはナシということ。
哀しいです。
結局、今年のお正月はなにも買わず、静かに執筆に専念。
今日は来るかしら、お願い、来てと、一日千秋の思いで、カードを待ち続け、やっと昨日到着。
新春セール開催中のネットショップを、遅まきながら訪ねてみましたが、すでに目ぼしい物はありませんでした。
散財しなくて良かったじゃないかと、ポジティブに考えるようにしなくちゃ、いけませんよね。
最近買ったソースの注ぎ口に驚愕。

画像ではわかりにくいのですが、プラスチック製のちっちゃな突起物が付いています。
初めてその小さな穴を見た時は、だぼっと豪快にソースを掛けたい派の私としましては、しみったれとるのぅと、やや不満でした。
ところが、注ぎ終えて、容器を元に戻した途端、あら、びっくり。
液だれ、ゼロ。
ソースといえば、液だれも含めての存在でしたので、容器の周りがべちょべちょになるのも、致し方なしと諦めてから、幾年月。
ところが、この注ぎ口ときたら、キレのいい、仕事っぷりを見せてくれるじゃありませんか。
感動の拍手を送りたいぐらいでした。
私は、ごく最近知りましたが、もしかして、すでに皆さんはご存知でしたか?
ソースといえば、私はかなり執着する方です。
高校生のある日、夕食がトンカツでした。
ひゃっほーと喜んだのも束の間、「ソース、切らしちゃって」と母の声。
代わりに、醤油をかけて食べろとの命令が。
トンカツにソースをかけらないなんて、こんな哀しいことがあるでしょうか。
しかも、醤油って。
この出来事が、思春期真っ只中の私を、いたく刺激したようで・・・その夜、夢を見ました。
スーパーに一人でソースを買いに行く夢です。
すぐ近くに商店街があるのですが、そっちではなく、なぜか遠いスーパーを目指しています。
やっと着いたスーパーで、私は必至でソースを探しますが、なかなか見つかりません。何故か、段々焦ってきて、心臓をバクバクさせながら、店内を走り回ります。やがて、店員を見つけて、ソースのある場所を尋ねると、レジの横だと教わります。なんだ、そんなところにあるのか、それじゃぁ、見つからないはずだと、妙に納得し、レジへと向かいます。レジの横にカウンターがあり、そこに大きな樽が置いてあります。中を覗くと、そこにはソースが。隣には、空の一升瓶と漏斗とお玉。そこで私は、樽の中のソースをお玉ですくい、漏斗を使って、一升瓶に移していきます。これを何度も繰り返し、一升瓶がいっぱいになると、コルクで蓋をして、レジに並びます。店員から金額を言われ、あっ、財布がないと気付き、一瞬パニックを起こしかけますが、そうだった、そうだったと、左手を広げます。すると、そこには、言われた金額とぴったり同じ額の小銭が。そのお金で支払いを済ませ、私は一升瓶を胸に抱きながら、家路へと急ぐ――と、こんな夢でした。
目覚めた時、あぁ、夢に見るほど、トンカツにソースをかけられなかったことが、ショックだったのかと、ソースへの執着心の強さに我ながら驚いてしまいました。
たかがソース。されどソース。私にとっては、とても大事な存在のようです。
非常に寒がりなのに、スキーをしていた時期がありました。
今から、何十年も前のことです。
格安ツアーに申し込んだところ、とんでもない民宿に泊まることに。
チェックインした時は、ごく普通の宿に見えたのですが・・・宿の女将さんが私たち4人を引き連れて、何故か、隣の建物へ。
明らかに、物置小屋といった風情。
疑問を抱きながらも、女将さんの後に続いて、中に入ると――嫌な予感は、的中。
広い土間には、様々な道具類が置かれていました。
女将さんは、トントントンと、階段を軽快に上がっていきます。
金縛りにあって動けずにいる私たちに気付いた女将さんは、階段の途中で足を止め、手招き。
恐る恐る階段を上ってみると、六畳ほどの部屋が一つだけ。
暖房を付けてくれながら、「寒くないかしらねぇ。寒いかもしれないねぇ。でも、若いから、大丈夫かもしれないねぇ」と、不安と、それを否定する願望を並べて、さっさと出て行ってしまいました。
建てつけが悪いせいのか、古さのせいなのか、隙間風が吹き込んできます。
私たちはこたつにもぐり込み、部屋が暖かくなるのを待ちました。
ですが、一向に暖かくならず、ダウンコートを脱ぐことができません。
この部屋で寝たら、二度と目覚められないのではないかと、女4人で真剣に話し合ったことを、鮮明に記憶しています。
結局、生き抜くために、ダウンコートは脱がないでおこうと結論づけ、そのままお風呂に行くことに。
当然、物置小屋にお風呂はなく、隣の母屋までの移動を敢行。
寒さにヒャーヒャー言いながら、母屋へ行き、入浴。
時間をかけて、身体を温めると、最大限の厚着をして、移動に備えます。
母屋から一歩出た途端に知る、雪国の恐ろしさ。
温まった身体を、ほんの一瞬で凍らせるパワーに、言葉もありませんでした。
部屋に駆け戻り、こたつに入りましたが、寒さで身体の震えがなかなか止まらず、女4人、いつまでも歯をカチカチと鳴らせていたことを、覚えています。
あの、女将さん。若いからって、無理です。そういうレベルじゃありません。
歯を鳴らしながら、心の中で、そう呟いていました。
雪国で生きる大変さを、垣間見せてもらった出来事でした。