魔の店
- 2013年02月14日
郵便受けに、毎日のように入っているのが、デリバリーメニューのチラシ。
オールカラーで、そこそこ経費がかかっています、といったメニューが多いですね。
いかにも、個人経営ですといった手作り感いっぱいのチラシなんかもありまして、これはこれで、好感がもてたりします。
こういったチラシは、ファイルに保管しておきまして、友人らが遊びに来た時などに、そのファイルを取り出して「さ、どこにする?」と尋ね、多数決で店を決めることも。
で、いざ注文しようとすると・・・お客様がおかけになった電話番号は・・・といったアナウンスが聞こえてくることも、よくあります。
店がなくなっているんですね。
チラシの日付けを見ると、まだ1年も経っていなかったりします。
激戦なんでしょうか。あっという間に店をたたんでしまうようですね。
以前住んでいた街には、ちっちゃな商店街がありました。
激安が売りのスーパーが駅の西口と、東口にありまして、それを目当ての買い物客たちで、夕方には、この商店街は大混雑でした。
この2軒のスーパーが中心ではありましたが、八百屋やうどん店、クリーニング店などの個人商店も、頑張っていました。
ところが、そこに、魔の店というのがありました。
立地的には、商店街の中でも駅に近い位置にあり、どちらといえば、恵まれている方です。
ところが、半年ともたない。
パン屋、洋食屋、一杯飲み屋・・・と、開店するものの、数か月後にはシャッターに、閉店しますと書かれた紙が貼られることに。
ある日、この魔の店の前を通りかかると、開店祝いの木札が立った花が。
今度は、なんの店? と、中を窺っていると、どうやら、コーヒー豆の専門店の様子。
そこで、考えます。
スーパーでは、レギュラーコーヒーもインスタントコーヒーもたくさんの種類が、お手頃価格で売られている。
ネギや牛乳を買うついでに、買えるという便利さも、スーパーにはある。
こうした優位に立つスーパーに、果たして、この新店は勝てるだろうかと。
きっと、専門店と謳うぐらいだから、美味しいコーヒー豆ではあるのでしょうが、コーヒーの味にこだわる人は、この街に、何人ぐらいいるもんでしょうか。
と、「どうかしらねぇ、コーヒー豆専門店っていうのは」と声が。
気が付くと、私の隣には50歳代ぐらいと思しき女性が一人立っていて、どうやら私に話しかけている模様。
「どうでしょうかねぇ」と、私も首を傾げます。
「1度は買ってみるかもしれないけどねぇ」と件の女性は言います。「相当美味しくないと、ダメよねぇ。また、3ヵ月ぐらいで閉店するんじゃないかしらね。ここは、場所がこんなにいいのに、勿体ないもんだわよねぇ」
そこで、私は尋ねてみました。「ここ、どんな商売だったら、上手くいくと思いますか?」と。
一瞬、驚いたような顔をした女性でしたが、すぐに楽しそうな表情になって、「分単位で子どもを預かってくれる託児所」と答えました。
その女性の説明によれば、こっちのスーパーで買い物をして、あっちのスーパーで特売品を買って、なんてことをしていると、2、30分はかかってしまうし、ポイントが2倍つく日なんかだと、レジで渋滞に巻き込まれることもある。そんな時、子どもがいると、あれも買ってくれなどとねだられて、余計な出費することもあるし、ゆっくり品物を選ぶこともできなかったりするので、分単位でちょっとの間、預かってくれる場所があったら、利用者は結構いるんじゃないかとのことでした。
なるほど、と、いたく納得しました。
この女性が、どんな職歴をおもちの方なのか、まったくわかりませんが、こういう、日常から生まれるアイデアの中に、商売の可能性が潜んでいるように、私には感じられました。
え?
コーヒー豆の専門店はどうなったかって?
4ヵ月で閉店しました。