横断歩道
- 2013年04月29日
先日、信号待ちをしていると・・・。
横断歩道の向こうには、ランドセルを背負った少女が一人。
小学4、5年生ぐらいでしょうか。
信号が青になり、私が歩き出そうとした時、ふと、横断歩道の向こうに目をやると、件の少女が、すっと真っ直ぐ右手を上げました。
そして、そのまま、横断歩道を進んできます。
格好いい。
迷いのない、右手の上げ方が、堪らなく恰好いいんです。
すれ違う時「格好いいよ」と声をかけたくなる気持ちを抑え、じろじろ見ないように注意しました。
口笛を吹けたなら、吹いていたかもしれません。
横断歩道を渡り切り、私が振り返ると、少女は上げた時と同じくらい潔い感じで、手を下ろし、細道へと入っていきました。
恐らく、学校で、横断歩道を渡る時、手を上げるよう、教わったのでしょう。
それをちゃんと、しかも恰好よくやっている少女が、とても素敵でした。
そこで、我が身を振り返ると、学校で習ったかどうか、記憶がありません。
でも、親が教えてくれたようにも思えず、やはり、学校で習ったと考えるのが自然でしょう。
習った当時、私は、あんな風にちゃんと手を上げただろうかと考えると、そんな記憶もありません。
さらにいえば、手を上げたこともあったが、いつの間にか、上げなくなったという、そういった流れの記憶もないのです。
学校では、手を上げて横断歩道を渡れと教わったが、大人たちは、やってないじゃん、といった理由から、やがて上げなくなり、「大人って、言ってることと、やってること、違うよね」といった子どもなりの冷めた目で、世の中を斜めに見ていたのかどうかも、定かではありません。
では、授業中はどうだったのか。
授業中には、真っ直ぐ手を上げていただろうかと記憶を辿りましたが・・・どうもはっきりしません。
ただ、中学以降では、教師が「誰か、わかる人」と言って、手を上げるような人はクラスにはいなかったという記憶がはっきりしています。
教師の方もわかっているので、手を上げさるという無駄なことはせずに、その日の日付けと同じ学籍番号の生徒を指名して、答えさせたりしていました。
では、小学校では?
どうでしょう。
確実なのは、私は積極的に授業に参加するような子どもではなかったということ。
だとしたら、ほかの生徒らが手を上げていても、まったく上げなかった可能性が高いように思われます。
その時、自分は上げなかったという思いが強く残っていたから、真っ直ぐ手を上げて横断歩道を渡る少女に、反応したのかもしれません。
あの少女は、どんな子でしょう。
学校では? 家では?
そんなことを、あれこれ考えているうちに、あの少女の物語を書きたくなってきました。