働くということ
- 2013年06月30日
中学生になると、母が言いました。
働け、と。
母のモットーは、「働かざる者、食うべからず」でした。
学校で禁止されていると、私は訴えましたが、そんなものはバレなきゃいいんだと反論されました。
日頃、学校の規則遵守には煩い母が、バイトをすることに関してだけは、規則を破れと促してくるのです。
が、中学生を雇ってくれるところなど、そうそう、あるもんじゃありません。
働き口が見つかったらね、ぐらいに考えていた私は、そのままにしていました。
すると、業を煮やしたんでしょう。
母が、○○スーパーで、いろんな職種の求人票があったから、面接に行って来いと言います。
まだ、素直だった私は、言われた通り、そのスーパーの人事課へ。
セーラー服姿の私を見た、担当者が「高校生?」と聞いてきたので、「中学生です」と答えると、「うちは、高校生からなのよぉ。高校生になってから来てね」と言われてしまいました。
そう母に告げると、実に残念そうな顔をしていましたっけ。
これで、バイトをするということは、私の頭から消え去りました。
が、母は忘れていなかった。
高校生になると、「より取り見取りじゃないか」と言い出しました。
なんのことかと思っていたら、高校生なら、いくらでも働き口があるぞ、という意味のようでした。
毎日のように、どこでバイトをするのだと聞かれ、そのプレッシャーに耐えられなくなってきた私が、本気で、どこか探さないと、マズそうだと気付き始めた頃のこと。
痺れを切らした母が、先に動きました。
駅前のパン屋でバイト募集の情報をゲットしてきたのです。
募集のチラシに「高校生可」と書いてあったと、嬉しそうに報告してきます。
これを拒否したら、母からどんな嫌がらせを受けるだろうかと考えると、空恐ろしく、面接に行くことに。
採用してもらい、ドジでマヌケな高校生のバイトが1人、誕生しました。
そのバイト先では、様々な年齢の人たちがいて、いろんな思惑があったり、複雑な人間関係もあったりもして、それまで、ぽわわんと生きていた私には、大層刺激的でした。
世の中というものを最初に教えてくれたのは、学校ではなく、このバイト先だったように思います。
私の小説では、ほとんどの登場人物が働いています。
それは、自分では無自覚で、ある取材の時に、そう指摘されて、気付いたのですが。
人が成長できるのは、働いている中で。
そう思っているせいかもしれません。
高校生のパン屋から始まった、私の職場は、その後色々変わっていきましたが、どこでも、たくさんのことを教わりました。
働くって、人の営みの中で、とても大切な行為のように思います。
あなたにとって、働くことには、どんな意味がありますか?