編集者と作家
- 2014年04月24日
新刊「我慢ならない女」が出てから、様々な感想が私のところに届きました。
その多くは編集者たちからで、「編集者に対して厳しいっすねぇ」というのが大方でした。
この小説の主人公は女性小説家。
当然ながら、編集者という仕事をしている人たちも複数登場します。
その編集者たちの描き方が、当の編集者たちからすると「厳しい」と感じるようなのです。
そんな時は「フィクションですから」と答え、「私と主人公は別人格ですから」とフォローするようにしています。
いつの頃からか、1つの都市伝説のようなものを信じていました。
作家というのは、編集者と呼ばれる職業の人によって育てられていくもの――という都市伝説です。
そんな小説を読んだのか、あるいは映画を観たのでしょうか。
実際に作家になってみると、そんな都市伝説は幻だったのだとすぐに理解します。
まず、編集者は2、3年で異動していくなんてことを、作家になるまで知りませんでした。
出版社にもよりますが、多くの場合、担当になってもらい、さあ、どういう小説にしようかと打ち合わせたり、食事などを共にして親交を深めたりしているうちに、「実はこの度異動になりまして」と言われることに。
私が新作を掛け持ちして書かないというスタイルを取っているせいもあり、1つの作品が完成する間に担当編集者が4人変わったなんてこともあります。
こうした環境では、編集者が1作家の成長をずっと見守り、育てていくなんてことは不可能なのです。
が、そもそも誰かに育てて貰おうと思っていたこと自体が、甘ちゃんだったと気付きました。
苦しくても、辛くても、自分で肥料をやり、水をやり、陽に向かって伸びていくしかないのです。
肥料の調合具合も、水のやり方も、嵐の避けかたも、自分で方法を見つけてトライしていくだけ。
孤独な戦いをずっと続けられる人が、作家で居続けられる人のように思います。
そうはいっても、時に励ましてくれたり、鋭い指摘をしてくれたりという人の存在は作家にとって大事す。
それを抜群のタイミングでしてくれる優秀な編集者というのが実在することも、お知らせしておきます。
また、そうした編集者たちのお陰で今の自分があると感謝していることも、併せてお伝えしておきたいと思います。
編集者たちの名誉のためにも。