盆栽

  • 2014年09月18日

数年前のことだったと思います。
テレビで盆栽がヨーロッパで人気だという報道がされていました。
海外では「BONSAI」と呼ばれ、その輸出額は景気の影響を受けてアップダウンはあるものの、おおむね右肩上がりで推移しているとか。
日本文化の輸出はアニメだけじゃなかったのかと、びっくりした記憶があります。
bonnsai
その番組ではイタリアで開かれたという盆栽イベントの模様も紹介されました。
大変な賑わいで、盛り上がっている様子が窺えます。
日本人が講師となり、実際に盆栽の植え替えをレクチャーする会場では、ずらりとダンディな男たちが並んでいます。
講師が盆栽の作り方を実際にやってみせると・・・伊達男たちの目は真ん丸に。
驚きから好奇心へ、やがて感動へと変わっていく様子が、その表情からは感じられ、なんだか微笑ましく思えるほど。

この時のことが私の記憶のどこかにインプットされていたのでしょうか。
新作「エデンの果ての家」のプロットを作成中、主人公の仕事をなににしようかとあれこれ考えている時、盆栽の仕事にしたらどうかと思い付きました。
そこで、本や雑誌を買い集め、勉強を始めます。
すると、なんちゅう奥の深さ。
盆栽が表しているのは、宇宙であったり、壮大な自然だったりすると知りました。
びっくり仰天です。
こういうのは勉強してみないと想像もつかないものです。
さらに究極のミニマムの美の追求と、一期一会を大切にする日本人の感覚があわさった、独自の世界観をもっているということも学びました。
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新作を書くにあたって、様々な準備をするのですが、その調査段階で新しい世界を知ることが往々にしてあります。
それは楽しく、また刺激的でもあって、つい夢中になって取材を続けるあまり、一向に新作に手を付けられない・・・といった困った状況にもなるのですが。
こういう資料を読んでいて面白いのは、専門雑誌。
それを趣味や仕事としている人たち向けの専門雑誌は、大抵存在していて、これが面白い。
特集記事を読むのも、ちんぷんかんぷんながら面白いのですが、なんといっても外せないのは、広告ページ。
お金を払って広告を載せているからには、読者に向けて売りたいものや告知したいことがある。
こうした広告ページを隅から隅まで見ていくだけで、様々なことを教えてくれます。
鉢が数百円から数百万と、価格幅が半端じゃないこととか、皐月(さつき)を育てるのに悩んでいる人が多いようだとか、正確な天気予報を望んでいる人がいるようだとか、そういったことは、愛好家たちが読む専門雑誌からしか取れない情報。
さらに読者からの質問や悩みを受け付けるページなんかは、そのまま小説に使いたくなるほど面白いネタが揃っています。
読者が参加できるイベント情報ページも、チェック。
愛好家たちが、今なにを望んでいるのかがわかります。

こうした専門雑誌や専門書を読み込み、頭に入れてから、プロットを作成し執筆に入ります。
新作「エデンの果ての家」でもそうでした。
主人公と父親のすれ違いを、盆栽の仕事に誇りをもつ主人公と、それをまったく理解しない父親という表現で描こうとしたものです。
興味のある方は、本をお買い求めください。

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