チャンス

  • 2014年11月03日

チャンスはそう何度もやって来るもんじゃない。
そのチャンスが来た時、それをモノにする人と、モノにできない人がいますね。
この差はなんだろうか・・・なんて考えてみたりします。
緊張してしまったとか、実力が足りなかったとか、色々ですかね。
そういったなかで、性格というのも大きな要素でしょうね。
ライター時代に知り合った別のライターさんが、大きな仕事の話が来たのに、自信がないとの理由で断ったと聞いて、腰を抜かしそうなほど驚きました。
せっかくのチャンスなのに、勿体ない事をするもんだとも思いました。
tyannsu
OLからフリーライター、作家へと職業を転々としてきましたが、今振り返って思うのは、私の場合「無知」が結構役に立ったなということ。
目の前の壁がどれほど高く、分厚いか、そういうのがわかってしまう人は、私には無理といった考え方をもつのでしょう。
が、壁の高さや材質や、厚さに対する知識がまったくないと怖くない。
だから、いきなりよっこらしょと登り始めてしまう。
途中で「あれっ、これは大変かも」と気付くのですが、ここから戻るのも大変だから、取り敢えずもうちょっと先まで行ってみるか、といったことになります。

ライター時代、食べてもいないコンビニスイーツ五十種類を、各メーカーの広報資料から想像して記事を書けという仕事がきました。
スイーツを食べてもいないのに、味を書き分けろという無理難題。
「食べてもいないのにですか?」と編集者に確認すると、「繊細な舌があるってわけじゃないんだから、食べたって、食べなくたって、想像で書くのは一緒だろ」と言われ、あぁ、確かにと納得。
こうした仕事を何度かこなしているうち「これ、フィクションじゃん」との思いが。
そして、もしかしたら小説を書けるんじゃないだろうか? との考えに行きつきます。
こういう安易な思考経過が、私の雑な生き方を象徴しているようで、お恥ずかしいったらありゃしません。
こうした時知識があれば、そんなの無理に決まってんじゃんとか、実力がなさ過ぎるとかの冷静な判断ができたでしょう。
が、無知というのは凄いもんです。
壁をよじ登り始めてしまったんですね。正気の沙汰とは思えません。
書き終えた時には、心身共にボロボロになっていました。
運良く本にしていただけることになり、担当の編集者との打ち合わせの席でのこと。
フツー第1作目というのは、自分に近い主人公にしたり、身近な人のことを書いたりするもんなんだけどどうしてこの主人公にしたの? と尋ねられました。
その作品は中学生の少年が主人公だったので、編集者は疑問に思ったようです。
初心者が自分から遠いキャラクターを書くのは難しいといった常識さえなかったせいです。
「作品の構成上少女ではあり得なかったので、少年にしました」と私が答えると、「それじゃ、大変だったでしょ」と言われたので「どういうキャラクターの設定にしたら書き易いかとか、そういうことはまったく考えなかったので」ともごもごと言い訳。
「知らないって、凄いね」と呟く編集者に、「ですね」と相槌を打つことしかできませんでした。
もし私が無知じゃなかったら、目の前の壁に怖気づいて上り始めなかったでしょう。
無知であることで破れる壁もあるように思います。

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