単行本「たそがれダンサーズ」が発売になりました。
本日から書店に並び始めます。
場所によっては数日ズレることもあるようですので、もし店頭になかったら、書店員さんに入荷日を確認してみてください。
「たそがれダンサーズ」には様々なおじさんたちが登場します。
これまで最高の人生を送ってきました・・・なんて人はいない。
皆が歩いて来た人生は、それぞれが願っていたものとは違っていて、不満を胸に抱えています。
へこんだり、拗ねたり、怒ったり・・・そんな毎日。
そんな彼らが社交ダンスと出合って・・・さて、どうなりますか。
本を開いて小説をお楽しみください。
とても趣きのある装丁にしていただきました。
奥行きと明るさが絶妙な配分でミックスされた装丁には、強さと同時に柔らかさも感じさせてくれる・・・と、私は感じていますが、皆さんはどう思いますか?
描かれている人たちの足がぴーんとなっているのも、好きなところのひとつです。
気持ちとしてはそれぐらい足が真っ直ぐ、そして高く上がっているんでしょうね、きっと。
実際は全然違うんでしょうが気持ちとしては。
大事です。気持ち。
小説にはおじさんたちだけでなく、女性たちもたくさん登場します。
出番は少ないのですが、それぞれがとても個性的で愛すべき人たちです。
彼女たちにもぜひ注目を。
この小説を完成させるまでには、たくさんの方たちのサポート、ご協力をいただきました。
有り難うございました。
ずっと記憶の底に埋もれていたのですが、「たそがれダンサーズ」の執筆のための取材中に、ふと思い出した人がいました。
高校生の時にバイトしていた喫茶店で一緒に働いていた、先輩女性のことです。
確か息子さんが私と同い年だと言っていましたから、母と同世代ぐらいだったでしょう。
勤務を終えた彼女が、とても楽しそうに帰り支度をするのを何度も見掛けていたので、ある日、これからどこかへ行かれるんですか? と尋ねました。
すると彼女はにこっとして「社交ダンスを習っているの」と言ったのです。
へぇといった顔をする私に彼女は続けました。
「私はね、社交ダンスのために生きているの」と。
そこまでの気持ちでやっているんだと、私は驚きました。
そして「あなたもそのうち夢中になれるものを見つけられるわよ」と言うと、手を振って喫茶店を出て行きました。
オーガンジーのスカートを翻して颯爽と歩いて行く後ろ姿を、私は随分と長いこと眺め続けました。
その先輩は今、どうしているでしょうか。
今も社交ダンスのために生きて、楽しんでいたらいいなと思います。
夢中になれるものがある人生は素敵ですよね。
新刊が出ます。
9月9日(月)から書店に並び始める予定です。
どんな小説か・・・言えなくて、ごめんなさい。
あと少しお待ちくださいませ。
今回もたくさんの人たちからご協力、サポートをいただきました。
この場を借りて御礼申し上げます。
有り難うございました。
新刊の発売前のこの時期、なにをしているかといえば――ゲラチェックなど、私が担当する作業はすべて終わっているので、ほっとひと息ついています。
そして祈っています。
この作品が1人でも多くの人に届きますようにと。
作家デビューしたのは2003年。
16年前のことでした。
9月9日発売予定の新刊は24作品目となります。
16年・・・月日が経つのって、速っ。
そしてこの間、小説を発表させて貰えてきたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。
デビュー作の見本を初めて手にした時の感慨は、今でもはっきりと覚えています。
嬉しくて、興奮してもいて、でもちょっとだけ恥ずかしいような気もして・・・。
書店の棚にデビュー作を見つけた時には、何度も出し入れしては装幀を撫でました。
この感覚は24作品目までずっと一緒です。
デビュー作を書店の棚から出し入れしている時、16年後も同じように、自分の本の装幀を撫でているかどうかなんて考えませんでした。
元々先のことを見通す力が不足している私は、目の前の完成した本に気を取られ、未来について深く考えられなかったのです。
でもそのお陰で、将来のことを思って、不安になったりはせずに済みました。
今、書いている作品に集中しよう。
その思いを積み重ねて、気が付いたら24の作品が出来ていました。
9日にお披露目する新作が、皆さんから愛されるといいなぁ・・・。
ファミレスの中には24時間営業でないところがあるようです。
ご存知でしたか?
最近、そうした記事を読むまで私は知りませんでした。
自宅近くにはファミレスがなく、しばらく行っていなかったせいでしょうか。
更に営業時間を減らしても、増収しているファミレスチェーン店があると知り、時代は変わったんだなとも感じました。
今は深夜や早朝に食事を摂りたいとか、誰かと繋がりたいといった場合、コンビニやSNSなどの別の選択肢がありますもんね。
ファミレスに行かなくても事足りてしまうんですね。
昔は緊急事態発生と友人から電話が入ると、ファミレスに集まったもんです。
誰かが別れたとか、フラれたとか、裏切られたとか、そういった類のケースが多かったように記憶しています。
そうそう。
誰かについに彼氏が出来たといったケースで、招集が掛かったこともありましたっけ。
間違いなく、私たちはコーヒー1杯で何時間も居座るヤな客でした。
店内は、こんな時間にどうしてここにいるのかよくわからない人たちで、結構混んでいました。
真夜中にミートボールスパゲッティや、ドリアなどを食べたりしても、胃が全然へこたれなかったのは、若さ故でございましょう。
今じゃ考えられません。
働き方改革の中の一つなのか「ジョブ型正社員」なる存在が生まれているとか。
仕事場所や内容を、最初から限定して正社員になる人のことのようです。
これだと転勤や、希望しない職種への異動などがないってことですから、希望する人は増えそうですね。
育児や介護、治療など、人にはそれぞれの事情があるので、仕事に自分の生活を合わせるのではなく、自分の生活に合った働き方が出来るというなら、それは理想です。
ただし。
その支社やお店、業務自体が閉鎖や統合などで、なくなってしまうような時、働く場所そのものがなくなってしまうというリスクが。
雇用側がいい救済方法を出せる場合だったらいいんでしょうが、そうもいかないこともあるでしょう。
そうした時、「ジョブ型正社員」の人たちは困ってしまいます。
ここが、これからの課題ですね。
学校を卒業して初めて就職した会社は、全国に店舗がありました。
新入社員研修の最終日に勤務地が発表になりました。
同期たちは全国のあちこちの店舗に配属されるのです。
北海道のお店に配属が決まったA男は、暖房手当てが出るんだってさと言い、その金額の大きさを喜んでいました。
名古屋や大阪行きが決まった同期たちからは、「大きいじゃん、それ」との声が上がりました。
同期の全員が知らなかったんです。
北海道で暮らすというのがどういうことか。
一年後ぐらいに同期会があり、北海道勤務中のA男に近況を尋ねると・・・「北海道の寒さを舐めていた。あんなちょっとの手当てじゃ、全然足りない」と嘆いていました。
当時、もし勤務地を選べる制度があったら・・・同期たちはどんな選択をしただろうかと考えてしまいました。
私は恐らく、当時の住まいから通える範囲の勤務地を希望していたでしょう。
A男はどうしたでしょう。
暖房手当てに目が眩んで、北海道を希望していたりして。
電車に乗っていたら雷が。
ぴかっと光った後で、ドドーンと低い音が聞こえてきました。
すると「キャー」と女性が悲鳴を上げました。
その瞬間、昔の記憶が蘇りました。
昔々のある日、河原でバーベキューをしていました。
十人ほどいたでしょうか。
その時、雷が鳴ったのです。
するとA子が「キャー」と悲鳴を上げて、怯えた様子を見せました。
友人が連れて来たA子とはその日が初対面。
バーベキューの準備に女性たちが取り組んでいる間、A子は男性たちとだるまさんが転んだをしていたので、同性から嫌われることをなんとも思っておらず、狙った獲物を確実に手に入れるタイプの人なのだろうとは思っていましたが、雷が苦手なのといったキャラも演じると知り、最強だなと思いました。
間を置かず、また雷が。
A子は再び「キャー」と叫び、その場にいる男性陣の中で一番のイケメンの腕を摑みました。
熟練の技に達している。
雨が降って来る前に撤収しようと皆が急いで片付けをする中、A子は「こわーい」とイケメンの腕に縋るだけ。
ふと、作業の手を止めて顔を上げると、女性たちと目が合う。
その一瞬で全員が同じ気持ちであることを理解。
A子を連れて来たB子が「ごめん」と謝ると、「B子のせいじゃない」と女性たちは口々に言いました。
記憶がはっきりしているのはここまで。
帰りの車に、誰と誰が同乗するかで少し揉めたような気がします。
女性たちは皆、A子と同じ車に乗るのが嫌だったんでしょう。
A子とイケメンはどうなったのかについては、ちゃんと覚えています。
帰京後もA子はイケメンに積極的にアプローチしたのですが、彼は付き合ってる子がいるんでと言って断りました。
しかしこれで終わらなかった。
A子はターゲットをあっさり変更。
バーベキューの場にいたC男に狙いを変えて、見事ゲット。
自分の目の前で、あんなにあからさまに他の男に媚びていた女と、付き合うことにしたC男ってなに? と、しばし女性陣で話題になっていました。
ぼんくらか、懐が深いか、どっちかだねと言い合っていました。
その後、人の噂で聞いた話では、A子とC男はそれぞれ別の人と結婚したそうです。
女性の悲鳴を聞きそんなことを思い出しました。