喧嘩
- 2025年03月31日
病院の待合室で。
椅子にはたくさんの患者たち。
その病院は予約してあっても、長く待たされることが常態化しています。
恐らく医師が患者の話をじっくり聞き、診察も丁寧だから。
そうであればこそ、多くの患者たちが押し寄せる。
だからたっぷり待たされる。
帰宅出来るまで長時間になるのを覚悟して臨むべき病院です。
覚悟をして臨んだその日、待合室で番がくるのを待っていると・・・斜め前方に座る男女に目が留まる。
二人ともとても小さな声で話をしている。
それでも私の場所からは内容を聞き取れる。
どうやら二人は夫婦のようで、夫はどうしてこのような状態になるまで放っておいたのかと、妻を責めている。
妻はたいしたことないと思ったからだと答える。
すると医者でもないのに自己判断するなと夫。
うるさいと妻。
徐々に二人はヒートアップしていく。
もう小声ではなくなり、待合室の患者たちに丸聞こえに。
患者たちの多くはスマホを弄っているものの、夫婦喧嘩のライブにも、しっかり耳をそばだてているといった風情。
妻はワンオペで育児をするのがいかに大変だったかを語り、夫は男の育児参加など、大企業勤務者でしか出来ないことだと言う。
喧嘩って、こんな風に揉めていた点から、テーマがどんどん発展していきますよね。
こうなると、最初なにで揉めていたのかも忘れてしまうぐらいで。
小説「腕が鳴る」に登場する、鶴元大輔と直子の夫婦の場合もそう。
夫婦喧嘩の発端は、大抵家の中が片付いていないこと。
直子が買ったダイエット器具や、冷え性対策グッズなどが、リビングに溢れていて、足の踏み場もないことに、大輔がキレるところから喧嘩はスタートします。
「行き届きませんで、あいすみません」などと言う女じゃない直子は、「働いていて時間がないんだから、しょうがないでしょ」と反論する。
で、喧嘩のテーマはどんどん発展していく。
二人とも相手を責め続け不満をぶちまける。
どっちかが疲れたら、今日の喧嘩は終了となる。
なにも解決していない。
だからまた喧嘩を繰り返す。
これにうんざりした大輔が、整理収納アドバイザーに依頼するところから、この小説は始まります。
整理収納アドバイザーから、思いがけない提案をされた二人が、夫婦としての暮らし方を模索していく姿が描かれています。