最高のデート
- 2025年06月16日
文庫版になって発売された「残された人が編む物語」の内容を少しだけご紹介。
この小説には5つの物語が収められています。
その中の1つ「最高のデート」の主人公は関根由佳。
44歳の由佳は化粧品の訪問販売の仕事をして、子どもを育てています。
以前は専業主婦でした。
10年前に銀行員だった夫が失踪。
それからずっと夫の帰りを待つ生活を続けています。
由佳は定期的に、全国の警察のホームページをチェックします。
遺体で発見された身元不明者の情報を、チェックするために。
ある日、身元不明者の所持品の一覧表に、見覚えのあるネクタイの画像を発見します。
それは夫の物なのか。
由佳の心は乱れます。
生きているのか、死んでいるのかが分からない状態で10年。
ようやく真実が分かるのか。
どういう結末を自分が望んでいるのか、どんな結末ならば納得出来るのかが、分からなくなります。
由佳が最後にどういう心境に達するのかを、見届けて欲しいと思っています。
私の友人A子が、B男と別れたのは7年前。
でもA子は未だにB男のことを忘れられない。
だからB男との復縁が叶うかを、占って貰ったりしています。
占い師は「そんなもん、無理に決まっているだろ」とは絶対に言わない。
それで「今はその時じゃない」などと言う。
そして次回の占いの予約を取るように勧めてくるという。
「占い師のカモになっているだけじゃん」と私は思うのですが、A子はそうは捉えておらず、占い師の元にせっせと通っています。
果たして7年間も忘れられないほどのいい男だったのか?
私はA子に確認します。「結構喧嘩してたよね」と。
するとA子は「たまにね」と軽く流す。
そしてどこそこに行った時に、とても楽しかったとか、こんな風に言われたなどと、素晴らしかった思い出のみを熱く語ります。
そうしたエピソードは、初めて聞いた時とは若干変わっていたりします。
繰り返し思い出しているうちに、自分に都合よく、ドラマチックに編集してしまった模様。
思い出は自分で編集出来てしまうので、真実を覆い隠してしまうことがあるようです。