文庫版が発売になった「結婚させる家」の舞台は、結婚情報サービス会社です。
この小説を書く前に、何人かに取材をさせていただきました。
その中には結婚情報サービス会社の人も。
色々と興味深いお話を聞かせて貰いました。
特に印象に残っているのは、目標を見失ってしまう会員が多いというお話。
紹介された人と次々に会っていくうちに、欠点ばかりが気になって真剣交際に進めない。
やがて会員からの連絡に返信するのが面倒になっていく。
面倒だとか、なんで結婚しようと思ったんだっけ、などと考え始めたら物事は進まないと、結婚情報サービス会社の相談員は言っていました。
迷いや疑問には目もくれず、目標に向かって突き進める人が、パートナーを見つけられるそうです。
小説「結婚させる家」にはカリスマ相談員が登場します。
彼女の名前は桐生恭子。
恭子は根っからのお節介焼き。
あれこれと会員の世話を焼きます。
会員たちに発破をかけ、叱咤激励し、成婚までもっていく手腕は、業界内外で高評価を得ています。

会員たちの尻を叩き続け、立ち止まらせないのが恭子のやり方。
この剛腕ぶりには危うい面も。
成婚が決まり退会した会員たちのその後を調査してみると・・・破談するケースが多かった。
この事実を知った恭子は戸惑います。
これまでの自分のやり方は間違っていたのかと。
恭子は訳アリの人生を送ってきました。
一度大きく躓いてしまったのですが、理解のある人たちによって救われたのです。
道を踏み外したものの、なんとか人並みの生活を送れるまでになったことに、感謝している恭子。
でも時折、孤独に耐えられなくなることも。
恭子が最後になにを見つけるのかは、本書でお楽しみください。
文庫版「結婚させる家」には様々な男女が登場します。
安藤仁は50歳。
区役所の職員です。
妻のタカ子と死別し、その寂しさを埋めるために結婚情報サービス会社に入会します。
この会社が主催するパーティーで、金子真帆と知り合います。
同じ50歳の真帆は、バツイチで2人の子どもと3人の孫がいます。
アパレル店の店員です。
活力が漲っているような真帆と一緒にいれば、自分まで元気になれる気がした仁は交際をスタート。
カリスマ相談員の桐生恭子に勧められて、豪邸での宿泊体験を始めます。
仁が真帆とのプレ夫婦生活の中で、なにを感じるのか・・・。
本書でお楽しみください。
パートナーとの死別によってもたらされる哀しみは、とても深く、痛い。
知人のA子は夫を亡くしました。
A子と夫の仲はフツーに見えました。
仲間で集まった席などで、夫の愚痴を零していたので。
A子自身もそう思っていたようです。

ところが。
夫を亡くした途端、自分が半分になったような感覚に襲われたそう。
毎日手作りしていた料理は一切しなくなり、出来合いのものを買うように。
A子にとっての料理は、夫のためにするもので、自分のためにするものではなかったようです。
掃除も洗濯も一気に回数が減り、外出もしない。
一日中テレビをぼんやりと眺めていたと言います。
夫とはしょっちゅう喧嘩をしていたのに、そういうことは思い出されず、楽しかったことばかりが蘇るそう。
そんな暮らしを3年ほど過ごしたA子は、人の紹介で介護施設で週に3日働くように。
家を出て外で人と接して働くことで、少しずつ前に歩き出す力を手に入れていった模様。
先週、久しぶりに会った時には、ガハハと昔のような笑い声を上げていたので、ほっとしました。

昔、フリーランスのライターをしていた頃のこと。
ある編集プロダクションに出入りしていました。
そこではマンションの一室に、ぎゅうぎゅうにデスクが詰め込まれ、編集者たちが仕事をしていました。
私のような下請けたちは隅の席で、打ち合わせをしたり、執筆をしたりしていました。
それは午後七時ぐらいの出来事。
電話を受けた編集者が「Aさん、お家から電話です」と言う。
Aはそこの正社員の女性編集者。
Aは電話を代わり話し出す。
「分からない。まだまだ時間が掛かると思うから。分からないって。はいはい」などと、割と雑な対応をしていました。
数日後。
またその編集プロダクションの片隅で仕事をしていると、「Aさん、お家から電話です」という声が聞こえてきた。
デジャヴか?
聞き耳を立てていると「分からない。まだ仕事が終わらないから。分からないって。はいはい」と、前回とほぼ同じフレーズがAの口から。
時間もほぼ一緒。
おいおいと思った私は、後でこっそりライター仲間に確認。
私が想像した通り、Aは毎日、家からまだ帰らないのかという電話を受けているという。
Aは30代半ばの独身で実家暮らし。
同居の親はほぼ毎日Aの職場に電話をして、何時に戻るのかと聞くという。
電話をしてこないでとAが頼んでも、親は聞き入れずに電話を掛けてくるのでしょうか。
そこら辺の事情は不明ですが、Aが不憫でした。
文庫版が発売になった「結婚させる家」には、両親に恵まれない子どもが登場します。
菰田純子には色々な夢がありました。
でもそれらのすべてを諦めてきました。
両親の意向に逆らえなかったから。

両親が愛してくれているのは分かっているので、自分の意思を押し通すことは我が儘だと思っていた。
そんな純子が一念発起して、結婚情報サービス会社に入会。
勿論、両親には内緒。
辣腕相談員、桐生恭子の手を借りて、パートナー探しを始めます。
果たして恭子は自分の人生を、自分の手に取り戻すことが出来るのか。
本書でお楽しみください。
10月8日に発売になった文庫版「結婚させる家」の中には、様々なカップルが登場します。
その中の1組のカップルをご紹介。
結婚情報サービス会社に入会した田坂直樹は、53歳のバツイチ。
相談員の桐生恭子に、相手に望む条件を語ります。
子どもが欲しいので、出産が可能な30代までの人を紹介して欲しいと。
恭子は直樹の目を覚まさせようと言います。
「育児ってものを甘く考えている。生まれたら終わりじゃなくて、そこから始まる。あなたが60歳の時に、子どもはいくつになっているのか、計算出来ているのか」と。
だが直樹の気持ちは揺るがない。
そこで恭子は一計を巡らし会話の練習になるからと、会員同士が気軽に出会えるパーティーに、参加するよう勧めます。
そうして直樹をパーティーに参加させることに成功。

当初、直樹は氷鬼をしているのかと思うほど、会場で直立不動の状態でしたが、恭子があれこれ世話を焼き、女性会員との会話にチャレンジ。
女性との会話に慣れていくうちに、関本梢といい感じに。
恭子は2人の交際を前に進めようとしますが、直樹は二の足を踏む。
梢が52歳だから。
カリスマ相談員の恭子をもってしても、直樹の結婚相手に望む条件を変えることが出来ません。
そこで恭子は、豪邸で1週間生活を共にするというプレ夫婦生活企画への参加を促します。
直樹と梢はこの企画に参加することに決めたのですが・・・。
2人がどうなっていくのかは、本書でご確認ください。