文庫版「息をつめて」が発売になりました
- 2025年11月13日
文庫版「息をつめて」が発売になりました。
この小説の主人公、土屋麻里はしょっちゅう仕事を変え、引っ越しをします。
理由があってのことなのですが、あまりにも頻繁にするために手慣れていきます。
引っ越しが前提なので、最小限の物しかもたない。
次の部屋を決めるのも、引っ越し業者への依頼も、素早くスムーズにこなす。
一方、私はといえば引っ越し下手。
これまで何度か引っ越しをしていますが、それはそれは一大事でした。
決めなきゃいけないことがあり過ぎだし、手続きだって煩雑。
この機に不要な物を処分しようと思うものの、あまりの量にへこたれてしまう。
結局、処分しきれないまま引っ越しの当日を迎え、業者のスタッフから「荷物、多いっすね」と言われてしまうのです。
シンプルに暮らしたい。
こんな願いがあるせいか、ルームツアーの動画を観るのが結構好きです。
撮影するぐらいなのだから、自分の部屋に自信があるのでしょうし、事前に片付けはしてあるのでしょう。
それにしたって素晴らし過ぎる。
選び抜かれた品だけが置かれた部屋は、オシャレで居心地がよさそう。
観るのは主に、ワンルームなどの小さめの部屋を撮影した動画。
豪邸を観ても、全く参考にならず「けっ」と思うだけなので。

小説「息をつめて」の話に戻すと、主人公の麻里が住むのはワンルーム。
なので、部屋の造りは大体他と一緒。
マンションのエントランスなども、他とそれほど違わない。
引っ越しを頻繁にする麻里は一瞬、自分の部屋番号がいくつだったか、分からなくなったりします。
ここに住んでいる、ここで生きているという実感をもてない生活を、麻里は送っているのです。
こんな麻里の人生をぜひ味わってみてください。