学生時代、友人とテニススクールに通っていました。
その室内で行われていたテニススクールは、大学生らしき男性コーチ1人に、生徒は女ばっかり20人以上。
1時間ほどのレッスン中に、自分の番が回ってくるのは、ほんのちょっと。
これじゃ、上手くなるはずもありません。
が、ほかの生徒さんたちは、別段不満があるようには見受けられませんでした。
ロッカー室で、聞くともなく聞いていると、コーチと一緒に飲みに行ったりしているようで、そういったことが楽しそうでもありました。コーチを君付けで呼び、「ああいうとこ、可愛いよねぇ」などと言っているOLさんたちが、やけに大人に見えましたっけ。
そうした席に呼ばれるわけでもなく、テニスも上手くなれず、ただ月謝ばかり取られていくことに疑問をもった私は、別のテニススクールを探すことに。
自宅から比較的近い場所に、別のテニススクールを見つけました。
早速、行ってみると、たまたま行った日が、申込み最終日だったようで、受付のアダルトレディに、「ギリギリセーフよ。よかったわね、間に合って」などと言われて、気が付けば、申込書にサインをしていました。
そして、友人と第一回目のレッスンへ。
コートの横でストレッチをしている集団を見た時、なんか、違うと感じました。
ワカメちゃんみたいなスコート姿をしているのは、私と友人だけ。
ほかの人たちは、トレーニング用のジャージを着ています。
しかも、やっているストレッチが、半端じゃなく、本気でやっている様子。
嫌な予感で胸はいっぱいになり、友人と無言で顔を見合わせていました。
やがて、コーチが登場。
ん?
こんだけ?
見回せば、生徒はたったの8人。
今日はたまたま休んでしまった人が多かったってことじゃなく?
などと動揺していましたが、そんなことにはお構いなく、当然のようにレッスンは始まります。
腹筋、背筋、ストレッチと、体育の授業かよと思うほど、しっかりと準備運動をさせられます。
そして、ボールを使ったレッスンが始まりました。
ネット付近にいるコーチがボールを打ってきます。
それを、生徒が打ち返して、列の最後尾につきます。
これを繰り返すのですが、打ち返して、ほっとしたのも束の間、すぐに自分の番が回ってきます。
気が付けば、ゼーゼーと息が上がっていました。
が、それは序章に過ぎなかったのです。
以前のように、「キャ~、失敗しゃったぁ」などとお遊び半分のテニスとは打って変わって、次々に飛んでくる球に食らいつき、とにかく打ち返すという本気度いっぱいのテニスをするスクールだったのです。
1時間のレッスンが終わり、疲労困憊の私と友人は、駅までの帰り道、口を開く元気もなく、無言でアスファルトの路面を見つめるだけでした。
すでにレッスン料を全額払っていたので、最後まで、なんとか通ったと思うのですが、もしかしたら、それは都合良く記憶を書き換えているだけで、途中で挫折したのだったかもしれません。
ただ、次シーズンには継続申込みをしなかったことだけは、確かです。
体験レッスンや、見学をしてから、決めるべきですね、習い事は。
教室の方針によって、同じスポーツでも、向き合い方が違いますから。
生まれて初めて飛行機に乗ったのは、高校の修学旅行で九州に行った時でした。
私のように初体験の生徒が多く、緊張と興奮の顔で、シートベルトをして離陸を待ちました。
やがて、動き出したような気配はあるのですが、初めて故、今一つ、よくわかりません。
そのうち、ゆっくり動いていることに気が付き、こんなに、のんびりした感じなんだぁと思っていたら、どうも、止まってしまったような気配。
中央付近の席にいた私には、窓外の景色を見られず、今、飛行機がどうなっているのか、皆目わかりません。
もしかして、もう飛んでる? などと呑気な勘違いをしていると、突然、機体が動き出しました。
隣席の友人と「動いてるね」と確認し合います。
すると、身体にGが。
思わず、友人と手を繋ぎ、息を凝らします。
やがて、ふわっと浮かんだような感覚が襲ってきて、窓側の席にいた同級生から「飛んだ」との声が。
すると、機内からは、拍手が。
私は隣席の友人と、「飛んだね」「うん、飛んでるね」と確認しあってから、同級生たちと同じように拍手をしました。
今、振り返ると、なんとも、可愛い高校生たちですね。
シートベルトを外していいと言われると、スチュワーデスさんと(当時はCAではなく、スチュワーデスと呼ばれていた)、写真を撮るための列が、早速できていましたっけ。
「トイレが狭いの~」なんて、一人が言い出せば、「私も」と、ただ一目見るためだけに、トイレの前にも行列ができていました。
なにもかもが初めてで、物珍しくて、興奮しっぱなしの搭乗体験でした。
行ったであろう名所旧跡のことなんて、まったく覚えていないのに、こうしたことは、思い出せるもんですね。
初めての飛行機への搭乗。
皆さんは覚えていますか?
映画「プレシャス」をDVDで観ました。
ここまで酷いかと、思わず、眉間に皺を寄せてしまいそうになるほどの、不幸が描かれていく一方で、主役のプレシャスが確実に変化していく様子は、小さな希望を与えてくれます。
プレシャスの母親の女優さんが、もう最高。
この人だけ、演技じゃなくて、素で勝負してるんじゃないかと思うほど、最悪の女を見事に演じています。
日本の女優さんで、これだけ最悪な女を演じられる人はいるだろうかと考えてみると、ちょっと見当たりません。
酷いセリフを言ったり、演技をしていても、どうも嘘くさい。
「カット」と監督の声が掛かった途端、「お疲れ様でした~」と笑顔で言いそうな、本当はいい人な感じが、ちらちら見えてしまうのです。
これに比べて、海外の役者さんの中には、コイツ、サイテーと、本気で思えるほど、根っからのヤなヤツという演技ができてしまう人が多いように思うのですが、私だけでしょうか。
悪いヤツという役をやる時、自分と違い過ぎて、肩に力が入ってしまうのでしょうか。
以前、時代モノの映画「十三人の刺客」で、稲垣吾郎さんが、狂気をもつ殿様役をやっていましたが、この演技は最高でした。
こういう狂った殿様役だと、思いっきり力んだ、演技をしてしまいがちだと思うのですが、稲垣さんは、敢えて、軽く演じていました。
それが、却って、狂気を際立たせ、観てるこっちは、怖いのなんのって。
鼻歌まじりに、人を殺したり、一欠けらの人間性も感じさせない行動が、やけにリアルにこちらの胸に迫ってきました。
稲垣さんが凄い役者さんだというのが、よくわかる映画でした。
こうしてみると、やはり悪人の演技というのは一通りではなく、難しいというのが、わかりますね。
それだけ役者の腕の見せ所とも言えるでしょうか。
小説の中に登場させる、悪役というのも、難しいもんでして、どこまでヤなヤツにするかという判断に、いつも苦労しています。
加減の調整が、難しいんですね。
いつか、魅力的なヤなヤツを書けるようになりたいもんだと、思っています。
王子って、いるんですね、現実に。
それは、先日行った、バレエ公演のこと。
新国立劇場で行われた「シルヴィア」という作品を観ていたら、「わわわ、王子様だ」と、なぜか慌ててしまいました。
召使いという設定で、割と地味な衣装で登場してきたのですが、明らかに、佇まいがフツーじゃない。
作品の内容をまったく知らない私としては、彼がどういう役なのか、わからないながらも、ただの召使いが、こんなに素敵じゃ、マズくない? と思っていました。
と、ストーリーが進んでいくと、彼が主役であることが、わかっていきました。やはり。
あれやこれやあって、最後はめでたし、めでたし、となるのですが、そういったストーリーなどは、どうでもよくなるほど、王子様に惹きつけられてしまいました。
とかく、その業界で、比較的イケメンの人を、「○○王子」と名付けて、喜ぶという風習がありますが、このダンサーは、そういったレベルとは別格。
タイツ姿で踊るわけですからね。
お伽噺の中にしか存在しないと思っていた、「本物の王子様」なのです。
福岡雄大という方で、プログラムによれば、たくさんの賞を取られた様子。
実力もルックスもOKの方のようです。
今後が、さらに楽しみですね。
久しぶりに観た、バレエだったのですが、やっぱり素晴らしいですね。
尋常ではない練習を何年も重ね、今、そこに立っているんだろうなぁと思うと、頑張れーと思わず、応援したくなります。
踊りまくっても、息なんか、上がってませんしね。
上がっていたとしても、舞台上では決して見せません。
私なんか、地下鉄の階段をちょっと上っただけで、フーハーいってしまいますが、鍛え方がハンパじゃないんでしょうね。
隣席の女性は、途中、舟を漕いでいましたが、最後になると突然「ブラボー」と叫んでいました。
観てなかったじゃん、あなた。と、つっこみたくなりましたが、ブラボーと口にできる勇気に免じて、ただ、横顔を見つめるだけにしておきました。
平日の昼間の公演だったのですが、満席状態で、大盛況でした。
もしかして、今、人気ですか?
夢を見るなら、バレエかもしれませんね。
非現実感が、堪らなくステキです。
しんどい日常から、かけ離れた世界に、しばし浸るだけで、明日への活力になりますもんね。