映画「プレシャス」

  • 2012年11月26日

映画「プレシャス」をDVDで観ました。

ここまで酷いかと、思わず、眉間に皺を寄せてしまいそうになるほどの、不幸が描かれていく一方で、主役のプレシャスが確実に変化していく様子は、小さな希望を与えてくれます。

プレシャスの母親の女優さんが、もう最高。
この人だけ、演技じゃなくて、素で勝負してるんじゃないかと思うほど、最悪の女を見事に演じています。

日本の女優さんで、これだけ最悪な女を演じられる人はいるだろうかと考えてみると、ちょっと見当たりません。
酷いセリフを言ったり、演技をしていても、どうも嘘くさい。
「カット」と監督の声が掛かった途端、「お疲れ様でした~」と笑顔で言いそうな、本当はいい人な感じが、ちらちら見えてしまうのです。
これに比べて、海外の役者さんの中には、コイツ、サイテーと、本気で思えるほど、根っからのヤなヤツという演技ができてしまう人が多いように思うのですが、私だけでしょうか。
悪いヤツという役をやる時、自分と違い過ぎて、肩に力が入ってしまうのでしょうか。

以前、時代モノの映画「十三人の刺客」で、稲垣吾郎さんが、狂気をもつ殿様役をやっていましたが、この演技は最高でした。
こういう狂った殿様役だと、思いっきり力んだ、演技をしてしまいがちだと思うのですが、稲垣さんは、敢えて、軽く演じていました。
それが、却って、狂気を際立たせ、観てるこっちは、怖いのなんのって。
鼻歌まじりに、人を殺したり、一欠けらの人間性も感じさせない行動が、やけにリアルにこちらの胸に迫ってきました。
稲垣さんが凄い役者さんだというのが、よくわかる映画でした。

こうしてみると、やはり悪人の演技というのは一通りではなく、難しいというのが、わかりますね。
それだけ役者の腕の見せ所とも言えるでしょうか。
小説の中に登場させる、悪役というのも、難しいもんでして、どこまでヤなヤツにするかという判断に、いつも苦労しています。
加減の調整が、難しいんですね。
いつか、魅力的なヤなヤツを書けるようになりたいもんだと、思っています。

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