適温のお茶を

  • 2014年06月16日

猫舌のくせに、冷たいものは飲みたくない。
そんな私は、長年不満を抱えてきました。

やかんをもっていないので、お茶を飲みたい時は、マグカップに水を入れて、電子レンジへ。
そこにスティックタイプの緑茶の粉を入れて、はい、完成。
急須で入れるのと比べれば、味は落ちますが、そもそも比べなければいい話なので、ノープロブレム。
問題は、すぐに冷めてしまうこと。
猫舌なので、作ってから5分ぐらいは放置。
程よく冷めたと思しきところで、飲み始めます。
当然10分も経てば、すっかり冷めてしまいます。
飲みごろの時間が短すぎます。
私はマグカップ1杯分のお茶を、3時間ぐらいかけてちびちびと飲みたい。
どうしたらいいのか。
その都度お茶を作ればいいじゃないかと、至極真っ当な意見が出そうなところですが、そんなスーパーメンドーなこと、したくない。
友人のなかには、電気ポットを購入し、いつでもお湯がある状態にしておけばいいのでは? とのアドバイスをしてくれる者も。
確かにその通りなのですが、キッチンに空いているコンセントはありません。
たこ足配線をすればいいのでしょうが、すでにコードで混乱しているキッチンに、さらに追加するには勇気が必要。

そんな時、閃いたのが、水筒というアイデア。
持ち歩くといった印象が強く、自宅にいるのに水筒を使うという発想は、それまで出てきませんでした。
が、保温という点でいえば、優れているに違いありません。
200mlサイズという、かなり小さい水筒をネットで購入。
それが、こちら。
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保温力はバッチリで、5、6時間経ってもちゃんと温かいので、ちびちび飲む私にはぴったりでした。
なんだかなぁと思うのは、ちゃちゃっと洗えばいいのかと思ったら、分解して洗うのが推奨されているようで・・・9つの部品を分解し、それぞれを洗い、乾燥させ、また組み立てるといった作業が、ちとメンドーな点です
そこまでしないと、密閉度が高まらないのだろうなぁと理解はできるのですが、9つの部品を毎日分解し、洗うのは、ぐうたらな私にはなかなかのハードル。
そこで、分解洗浄は週に1度にしよう。
と、決めました。
それぐらいで充分じゃないかと、根拠はまったくないのに決めてしまえば、こっちのもの。
今は毎日適度に温かいお茶をいつでも飲めるので、喜んでいます。

「恋愛検定」の文庫が発売になりました

  • 2014年06月12日

恋愛検定の文庫が発売になりました。
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単行本の時と随分雰囲気の違う装幀になりました。
皆さんはどちらがお好みでしょうか?
単行本を出した後に書いた1話分を追加してあります。
様々な恋模様をお楽しみください。

人の恋愛話に興味はありませんという方は・・・小説の中にでてくる恋愛の神様に感情移入して読むのはどうでしょうか?
個性的で憎めないキャラクターです。
恋愛の神様をどういうキャラクターにしようかと考えた時、中間管理職のようなポジションにいる人の姿が浮かびました。
ノリノリで恋愛の神様をやっているのではなく、嫌々やっていたら・・・神様の世界では傍流で、ほかの神様がよかったのになぁと不満を抱えていたら・・・上からは成績を上げろと言われ、受検者からは尊敬されていなくて、なんだかなぁと毎日思っていて・・・辛い現実から逃げるためにアルコールを大量に摂る・・・。
気が付いたら、なんだかとても人間味あふれる神様になっていました。

やる気のない恋愛の神様なので、恋愛検定の受検者に対して、親切ではありません。
含蓄のある言葉なんか言ってくれない。
良きアドバイスも一切なし。
ところが、こんな恋愛の神様も変化していきます。
上司が変わり、合格率という結果を求められるようになると、受検者にこっそりヒントを出すようになったり、コンプライアンスを第一に掲げる上司になると、受検者に対して注意点を告知するようになったり。
やがては、なかなか踏み出せない受検者を励ますようになっていきます。
神様もいつのまにか成長している・・・なんてところを楽しんでいただけたら嬉しいです。
たくさんの登場人物を書いてきましたが、その中でも特にこの恋愛の神様は大好きなキャラクターの一人です。

たくさんの神様がいるという考え方は、楽しくて好きです。
小説の神様がいて、努力の神様がいて、サッカーの神様がいて、掃除機の神様がいて・・・どんな性格なんだろうなんて考えているうちに、わくわくしてきませんか?

ナースが

  • 2014年06月09日

そこそこの規模のクリニックに行った時のこと。
ドクターによる問診が終了し、採血することに。
採血は隣の部屋で行うので、そこで待っているようにとの指示が。
言われた通り、隣室で待っていると・・・現れたナースにびっくり。
乱れ髪がハンパない。
竜巻の中を突っ切ってきましたと言われたら、やっぱりと納得してしまうぐらい。
一応ひっつめてはいらっしゃいます。
ゴムとピンを使って、髪をまとめようという気持ちはあるようにも見えます。
が、不器用なのか、あるいはきっちり縛るのは嫌なのか、はたまた朝はぴっちり縛っているが、激務をこなしているうちに乱れてしまうのか、それともいい女はアンニュイでなければならないという独自のポリシーをお持ちの方なのか・・・妖怪に近い感じになっています。
年の頃は、30代から50代ぐらいの間でしょうか。
幅がやけにあるのは、オリジナリティが強過ぎて、人間の年齢の尺度をあてられないように思うから。
もし、私が入院患者だったら、このナースに夜勤はしていただきたくない。
トイレに行った帰りかなんかに、巡回中のこのナースと鉢合わせでもした日にゃ、失神しますね、まず。
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乱れ髪のナースが聞いてきました。
「アレルギーはありますか?」と。
おう、そうだったと思い出した私は、アルコールで肌を消毒すると、赤くなりますと答えました。
「そうですか。ちょっとお待ちください」と言って、ナースはどこかへ消えました。
大抵注射を打つ前に、ナースが消毒液が含まれている脱脂綿などで肌をきれいにしてくれますが、私には合わないようで、赤くなってしまうのです。
別に痛みも痒みもないので、いいっちゃいいのですが、それを見たナースが慌てたりすることもあるので、事前に報告するようにしています。
ところが。
待てど暮らせど、乱れ髪のナースは戻ってこない。
クリニックで私がこうしたことを言うと、ナースは「そうですか」と手近の引き出しかなんかを開けます。
そして、通常よりマイルドな消毒液が含まれているらしき脱脂綿を、ささっと用意してくれるのですが。
私のような人は滅多にこないクリニックで、在庫を遠い場所に取りに行かなくてはいけないのか、ナースは戻ってこない。
しょうがないので、左袖をまくり上げた状態で、壁にかかっているカレンダーを眺めて、来週誰かの送別会なんだなと、クリニック内のイベント情報をゲット。
やがて、あまりに戻ってこないので、私のことを忘れて別の仕事に没頭しているのではとの不安が。
ナースが消えたカーテンの向こうを覗いて、声をかけてみようかとの思いが湧き上がってきますが、カーテンを開けたら、斧を研いでいるような気がして、それもできません。
随分経ってから、ようやく乱れ髪のナースが戻ってきました。
「お待たせしました」と言うナースの声は若干息が切れているようです。
「どこまで行ってました?」と聞きたい気持ちを抑えて、「いえ、こちらこそお手間をかけます」と声をかけました。
いつもなら、注射を打たれている時は、そこに目がいかないよう、あらぬ方へ顔を向けているのですが、変なものを打たれて、身ぐるみはがされるといった物語が頭に浮かんでしまったので、じっと注射針を見つめました。
何事もなく採血が終わり、ほっと胸を撫で下ろしました。
その時、乱れ髪のナースがうっすらと微笑んでいることに気が付きました。
入室してから初めて見る、笑みでした。
もしかして、採血好き?
その乱れ髪で採血好きというのは・・・背中がぞくっとしてしまいました。

扇子

  • 2014年06月05日

扇子をバッグに入れて持ち歩くようになりました。
部屋着や布団も夏用のに順次切り替え中です。

以前使っていた扇子は、数年前の暑い日に、たまたま通りかかった店で売られていて、衝動買いしたもの。
これで夏を過ごしやすくなると期待していたのですが・・・。
その扇子には香が仕込まれていて、扇ぐと、微かにその香が漂ってくるのです。
これ、失敗。
買う時には、サンプルを手にして扇いでみたりしたのですが、香はしませんでした。
皆が扇いだせいで、消えてしまっていたのでしょうか。
レジに持っていったのは、サンプルの下に並んでいた、袋に入ったもの。
自宅で袋を開けて、扇いでみると「わっ、においがキツッ」といった具合。
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「そんなに夏が嫌かね?」と友人に尋ねられ、「ん?」と聞き返すと、「物凄く顔を顰めて扇子を動かしているから」と指摘されました。
どうやら扇子から漂う香が嫌で、顔を顰めながら使っていたのを、夏が嫌いで嫌いでしょうがないからと思われたようです。

それでも新たに別の扇子を購入するでもなく、顔を顰めながら扇ぐというのを、夏の風物詩にするべく健闘していたところ、思わぬところから救いの手が。
化粧品を買ったところ、プレゼントとして扇子が届いたのです。
早速扇いでみると・・・におわない。
無臭の扇子の素晴らしさに感動。
扇子はこうじゃなくちゃいけません。
しかも、小袋が付いているので、バッグの中でポーチやなんかに押しつぶされて痛むのを防いでくれます。
こうしたなにかを買った時に貰う粗品で「うわぁ、素敵」と思うことは滅多にありませんが、これはヒット。

そこは運転免許の更新のために訪れた会場でした。
一部屋に集められ、皆でビデオを見させられることは、何度も経験していたので、わかっていました。
その部屋にはすでに人がいっぱいで、最前列にしか空きはありませんでした。
仕方なく最前列の端に座り、扇子で扇ぎだしました。
駅から結構歩いたことで運動した汗と、迷ったために出した冷や汗で、暑かったのです。
部屋の背後から、男性の「暑いですか?」という大きな声が。
振り返ると、バチンと男性スタッフと目が合います。
周りを見回してみると、扇子をバタバタ動かしているのは、私のみ。
完璧に私にのみ尋ねているようです。
どうしよう。
と思いながらも、手を動かし続けていると、その男性が「冷房をもう少し強くできるかなぁ」と言い出して、歩き出しました。
その向かう先にあるのは、空調のコントロールパネルが設置されているらしき壁。
わっ。そんな。
私だけのために温度を下げたりしたら、皆々様に申し訳ない。
「あの、いえ、全然大丈夫です。もう暑くなくなりました」と、扇子をぱちんと閉じて机に置き、もう暑くないというアピール。
「大丈夫ですか?」と確認されたので、「はい。お気遣いいただきましてありがとうございます」と、本当はまだ全然汗はひいてはいなかったのですが、精一杯涼しい顔で答えました。
扇子で扇ぐという行為は、意外と人の目に強烈に映っているようだと気付いた一件でした。

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