小説には長編と短編があります。
なにが違うかといえば、言葉通りその長さです。
私は長編専門です。
たまに「短編を書いてみませんか?」とお話を頂戴します。
そんな時には「長編と短編では使う筋肉が違うので、私には短編は書けません」と申し上げお断りします。
「そうは言わずにトライしてみては」と仰る方には、「マラソン選手なのに、同じ陸上競技だから、100m走もやってみたらどうですかと言われているぐらいムチャに感じます」と答えます。
すると「両方お書きになる作家も多いですよ」と言う編集者も。
そういう時は・・・黙ってテーブルの1点を見つめてじっとしている。
そのうちに編集者はじわじわとダメなんだなということを理解してくれて、「それじゃ、長編で」と妥協してくれます。
そうなったらこっちのもの。
「はい。頑張りますっ」と大きな声で宣言する、というのがいつものパターンです。

長編と短編では書き方がまったく違うのだろうと思います。
書いたことがないので、あくまで推測なのですが。
また楽しみ方も長編と短編では違いますね。
読者としてはどちらも読みますし、どちらも好きです。
長編では登場人物たちの変化や成長をゆっくりと味わえるのがいいですし、短編では1シーンに凝縮された喜怒哀楽が、とても身近に感じられるのがいいですよね。
同じように連続テレビドラマと映画の楽しみ方にも違いがありますね。
連続テレビドラマの場合、トータルの時間はかなり長くなりますから、登場人物に寄り添っている時間も長くなり、小説でいえば長編の楽しみ方に近い感じでしょうか。
一方の映画は、一気に気持ちを作品の中に入っていける没入感が強く、これは短編の味わい方に近いように思います。

NHKBSプレミアムドラマ「嫌な女」が最終話を迎えます。
4月10日(日)午後10時からが第6回の最終回となります。
連続のテレビドラマでしたから、変わっていく徹子と、変わらない夏子に寄り添う時間が長くなり、これによって深く作品を堪能していただいていたならば、とても嬉しいのですが。
俳優の皆さんをはじめ、多くのスタッフさんたちによって、丁寧に真摯に作られた作品です。
どうぞ最終回をお見逃しなく。
美術館には大抵荷物を預けられるロッカーがあります。
利用するには100円を入れて錠を掛けますが、開錠と同時にその100円は戻ってきます。
私はバッグにあれこれ入れる習慣があり、結構重いので、空いていればこのロッカーを利用します。
折り畳み傘や手帳、筆記用具、リップなどを収納しているポーチといった品々のほか、コートなどもロッカーに入れます。
そして身軽な状態で館内を歩きます。
その日もそうして館内を回遊し、絵を堪能し終え、ロッカーの前に戻ってきました。
鍵を穴に差し込むと、カチッと100円玉が落ちる音が。
で、鍵を捻る。
ところが鍵穴がびくともしない。
でもって、開かない。
さっきより強い力で鍵を捻ってみますが、ダメ。
そうそう、私はドジだった。
と、己のことを思い出し、ロッカーの番号と、鍵についている札の番号が合っているかを確認。
が、合っている。
故障?
あー、できれば私が壊したのではありませんようにと祈りながらスタッフを探します。
受付にいた女性スタッフに「鍵が開かないんです」と訴えると、「100円が落ちる音はしましたか?」と聞かれたので、激しく頭を上下に動かし「しました、しました」と答えると・・・。
その女性スタッフは、私が握っていた鍵に手を伸ばしてきました。
そしてその鍵を摑むと「このむきで、穴に差し込んでください」と言い、「このむきです」と繰り返しながらそのまま鍵穴に差し込めるよう鍵を縦にした状態で戻してきました。
えっ?
鍵を逆に差し込んでいたなんて、しょうもないオチ?
が、確かに鍵穴に差し込んだ鍵を左右に動かしてはみましたが、一旦抜いて、上下を逆にしてのトライはしませんでした。
そんなことこれっぽっちも思いつかなかったのです。
自分のダメっぷりがたまらなく恥ずかしくなり、「やってみます」と小声で言って、ロッカー前に戻りました。
で、言われたむきで鍵穴に差し込み、捻ってみると・・・すっと鍵が動きました。
なんちゅう応用力のなさ。
鍵が動かなかったら、上下を逆にしてみようと思いつかなかった自分が腹立たしいやら、情けないやら。

そのまま何事もなかったように帰れればよかったのですが、残念ながらそこは先ほどの受付の前を通過しないと、外に出られないつくりになっています。
あまりに恥ずかしいので、さっきの人が休憩に行っていたらいいんだけどと思ってしまう。
そして受付の前に。
休憩に行っていなかった。
そこで、ポンコツですみませんといった風情を全身から発しながら「お世話様でした」とペコリと頭を下げて受付前を通過。
駅に向かって歩き出しながら、今度開錠できない時には、必ず鍵を逆さにしてトライしてみるぞと誓ったのでした。
やけにサプリメントに詳しい友人がいます。
この友人は海外旅行の際には、税関で大抵別室に連れて行かれ、スーツケースに入っている大量のサプリメントの説明を求められるそうです。
これは売買目的ではなく、自分が飲むものだと説明し、いかに海外での食事では栄養バランスが偏るかといった講釈まですると言っていました。

私はこの友人ほどに興味はなく詳しくもないのですが、なんとなく血液サラサラの方がいいなとは考え、そうなると謳っているサプリメントだけは毎日摂っていました。
それの説明書きには1日4個飲むようにと書いてありました。
そこで毎食後に飲むように。
しかしこれだと1日3食なので3個となり、1個足りない。
でもまぁ、フツーの食事からも摂っているだろうから、大体こんな感じでいいだろうってな具合で1日3個を飲んでいました。
件の友人に聞かれでもしたら、どんだけ長い説教をされるかわかりません。
ある日、いつものようにネットショップでサプリメントを買おうとすると・・・容器が一新されたと書かれていました。
あっそ、ぐらいの薄いリアクションで購入。
サプリメントの容器にもまったく興味がないのです。
届いたサプリメントの容器は確かにデザインが変わっていましたが、なんの感慨も抱かず、即冷蔵庫へ。
その日の夕食後、サプリメントの容器の蓋を開けて・・・びっくり。
サプリメントの1個のサイズが、巨大になっている。
急いで容器の裏書きを読んでみると、1日1個でいいと書いてある。
これまでも1個のサイズはそこそこ大きかったのに、それが4倍になっている。
これは喉を通るのだろうかと思うぐらいの大きさ。
なんの知識もなくこれを目にしたら、口に入れるものだと思う人はいないんじゃないかというぐらい。
色が透き通ったゴールドなので、子どもの頃流行った、滅茶苦茶跳びはねるスーパーボールを思い出して、地面に打ち付けたくなりました。
私は元々薬のようなものを飲むのが得意ではなく、4錠飲めと書いてあったりすると、一気には無理で、1錠ずつ水で飲んでいくぐらいなのです。
こんな私には絶対に無理なサイズ。
多分1日4個より、1日1個の方が便利だろうという発想でしょうかね。
これによって喜ぶ人が多いのかもしれませんが、私はがっかり。
このサプリメントは飲まなくなりました。
唯一飲んでいたサプリメントが、サイズの巨大化という思わぬ理由で飲めなくなったので、現在はなにも摂っていません。
友人に言えば、きっと私にも飲めるサイズのものを紹介してくれるのでしょうが、話が長そうなので相談するのは止めておこうと思います。
スプリングコートではちょいと暑そう。
そんな日は、ジャケットの上にストールを巻き外出します。
小さくたたんでバッグに仕舞える薄手のストールは、1枚あると重宝しますね。
帰宅後ジャケットを見ると、ストールから移ったと思われる水色の糸ぼこりが。
そうそう、私は携帯用の洋服ブラシを持っていたっけ。
と、バッグからポーチを取り出し探してみましたが、入ってない。
そのポーチに入れていると思い込んでいたのですが、いつの間にか出してしまったのか、それともそもそもの記憶違いでしょうか。
どこへやったのか・・・。
こんな時やるのは、自分ならどう考えるだろうかと想像すること。
携帯用の洋服ブラシを使おうと思うのは、クローゼットの前にいる時だろうなと、私なら考えそうです。
思わぬ形で己と向き合うことになりました。
クローゼットの中の収納ボックスを、右から順に開けていきます。
携帯用のため名刺サイズぐらいで薄いものでしたから、なにかの隙間に入り込んでいるかもしれません。
なので、中のものを全部出すぐらいの徹底さでもって探していく。
と、洋服ブラシを発見。
でも、探していた携帯用のではなく普通サイズのもの。
携帯用だけでなく、普通サイズの洋服ブラシも持っていたことをすっかり忘れていました。
で、肝心の携帯用のは見つからない。
ひとまず普通サイズの洋服ブラシをジャケットにあて、水色の糸ぼこりを排除。
すっかり綺麗になったものの、気持ちはすっきりしない。
私のことだから、とんでもない発想で、予想外のところに仕舞ったのかもしれないとの思いが。
自分の粗忽さ、ぽんこつぶりは世界で1番わかっています。
で、梱包用品を収納してあるボックスや、筆記具類を仕舞ってある引き出しを探してみました。
が、見つからない。
携帯用の洋服ブラシを私は本当に持っていたのだろうかと、そんなことまで疑うように。
結局発見できず。

それから1週間ほど経ったある日のこと。
デスク上のスケジュール帳のページを捲ろうと、手を延ばしました。
デスクの右隅がスケジュール帳の定位置です。
で、いつもページが捲れないように、重しとして載せているプラスチック製のモノを摑んだ瞬間、はっとしました。
その重しこそ、携帯用の洋服ブラシだったのです。
げげげげっ。
毎日何回も手にしちゃ、ページを捲っていたっていうのに。
いつの間にやらそれを重しとして認識してしまい、それが本来は携帯用の洋服ブラシだったことを忘れていたようです。
っていうか、忘れていたってどういうことよと己につっこみつつ、自分の壊れっぷりが心配になりました。
大丈夫ですかね、私。