ずっと前から欲しいと、いや、必要だと思っていました。
布団用掃除機。
アレルギー体質の私にとって、ダニの除去はちゃんと対処しなければならない問題です。
が、高いのよねぇと長年保留にしていたのですが・・・入会している健康保険組合から届いた会員用通販チラシに、布団用掃除機を発見。
胃薬や風邪薬に挟まれて、布団用掃除機が掲載されていることにツッコミ心を刺激されましたが、健康という大きな目的の前では胃薬や風邪薬と同等なのだろうと判断し、そこにそれ以上反応するのは止めました。
そんなことより、その布団用掃除機がメッチャ安い。
テレビCMなどで有名なあんな商品や、そんな商品よりひと桁違う。
喜び勇んで購入。
値段を見てあまりに心が躍ってしまったせいでしょう。
サイズをノーチェック。
届いた布団用掃除機は、予想外にデカかった。
保管場所を確保するため、押し入れの整理をするはめに。
そしてなんとか布団用掃除機の居場所を作ると、逸る心を押さえながらスイッチオン。
すると・・・びっくりして3秒でスイッチオフ。
作動音が煩いのなんのって。
これまでの私の人生の中で、こんなに大きな音を立てたことはないと思うぐらいの音が出る。
ここは工事現場かっちゅうぐらい。
ふと、いつものように私がドジっているせいではないかと思い至りました。
外していないシールや部品があって、それで異常音が出ているのではないかと考えたのです。
そこで同封されていた説明書を何度も読みましたが、コンセントに差し込み、スイッチを入れるだけで良い模様。
どうしよう。
近隣から苦情がきたら。
静かに平和にこの街で生きていくのが願いなのに。
爆音を立てる迷惑な人という評判が立ち、出て行ってくれと言われるようなことになったら・・・心配です。
でもダニは駆除したい。
5分間だけ許して貰おう。
と、勝手に許される時間を5分と決めて、再びスイッチオン。
布団の上を滑らせます。
しばらくして、1本の髪の毛が落ちている箇所に近付きました。
私としては、布団用掃除機がその髪の毛を吸い取ってくれるものと思っていたのですが・・・なんと布団用掃除機は髪の毛の上を通過したのに、髪の毛はそこに残っている。
どういうこと?
と思いながら布団用掃除機をゆっくりバックさせて、再び髪の毛の上を通過させます。
が、やはり髪の毛はそこにある。
また髪の毛の上を通過させるよう布団用掃除機を前に進める。
でも髪の毛はそこにある。
「俺に任せな」と言わんばかりに爆音を出しておきながら、1本の髪の毛を吸い取れないってどういうことでしょう。
ダニ取りは得意だけど、髪の毛は苦手なんでしょうか?
布団の上にある髪の毛1本を吸い取れない掃除機が、布団の中の奥深くにいるはずのダニを吸い取れるのか? との疑問が浮かびます。
5分間の布団掃除を終えた時心にあったのは達成感ではなく、徒労感でした。
さらに布団用掃除機に対する不信感も。
それでどうなったかって?
押し入れの中に入れっ放しで、二度と登場していません。
安物買いの銭失いの典型例となりました。
歯を磨く時のスタイルは、右手に歯ブラシ、左手には手鏡と決めています。
手鏡を持ち場所を確認しながら歯を磨くのは、歯医者の勧めによるものです。
歯磨きタイムが終わった時には、この手鏡には白い粉末が飛び散っています。
歯磨き粉です。
そこで毎回手鏡を洗ってティッシュで拭き取るというのが、歯磨きのルーティンに入っています。
歯磨きをするのは洗面台の前で。
洗面台の上部には鏡があります。
鏡の裏は棚になっていて、そこそこの大きさ。
ここも歯磨きタイムが終了した時には、白い粉末が飛び散っています。
歯磨き粉っていうのは結構遠くまで飛ぶもんです。
性格上こちらの鏡はそのまま放置したいところです。
見て見ぬふりというのは結構得意でして、明らかに視界に入っているゴミなども「ないってことにしておく」という呪文を唱えて放置するのは日常茶飯事。
だがしかし、鏡だけはダメ。
見て見ぬふりができない。
気になってしょうがないので、ティッシュを少し濡らして粉末を拭き取り、さらに別のティッシュで乾拭きをします。
食後に歯磨きをするので、1日に3回この拭き取りを行うことになります。
「これって結構メンドーだけど、私頑張ってる」と友人にアピールした時のこと・・・そもそも鏡にそんなに歯磨き粉は付かないと言われてしまいました。
そうなんですか?
「手鏡の方ならわかるけど、洗面台の鏡との距離ってどれくらいよ?」と問われ、「これぐらい」と手で40センチぐらいの距離を示すと、「そんなに離れてて、飛ぶ?」と驚かれてしまいました。
飛びませんか?
てっきり歯を磨くすべての人類が、周囲に歯磨き粉を飛ばしまくっているものだと思っていました。
そして歯磨きの後には、その粉末を拭き取る宿命を、人類は背負わされているのだとも思っていました。
だから毎回メンドーでもやり続けなければならいのだと、自分に言い聞かせてきました。
ですが、それは歯磨き粉を私が飛ばし過ぎていたからで、皆さんはそんなに飛ばさないのだとしたら、私の思い違いはとんでもなくデカいですね。
そこで歯磨き粉を飛ばさないようにしてみようと、手をゆっくり動かしてみたり、指の力を抜いてみたりしました。
が、飛び散る量に変化はありません。
そのうちそおっと慎重に歯ブラシを動かしていること自体がメンドーになって、「毎回拭き取る女のままでいいわ」と開き直りました。
未整理の書類の山がありました。
スキャナーでデータとして取り込んだ後で、処分しよう。
それまではちょっとここに置いといて・・・なんてやっているうちに、大量の書類の山になってしまいました。
書類はファイルボックスに入れ、窓の前に乱雑に重ねていました。
窓を開ける時には僅かな隙間に片足を置き、ノブまで手を伸ばさなくてはなりません。ちょっとでも身体がファイルボックスに触れれば雪崩が起こるので、ぐらつかないよう細心の注意をしながら手をノブに伸ばします。
しかし片足立ちなので、ややもすると身体はぐらつきます。
絶妙なバランスを維持しながらの窓開けです。
なんとかせねばと一念発起し、書類を収納するため棚を購入することに。
書類は減りはしませんが、少しは見栄えがよくなると考えたのです。
1人で組み立てて10分かかると書いてあった書棚を2つネット注文。
同封されていた説明書を見ながら組み立て始めると・・・「この組み立て方を書いたヤツ、出てこいや」と文句を言いたくなりました。
難し過ぎる。
1時間経っても棚の形になるとは思えない状態のまま。
呪いの言葉を呟きながらネット検索したのは、あなたに代わって家具を組み立てますと謳う会社。
これが結構ある。
もしかして家具メーカーと組み立て屋は裏で繋がっていたりしますか?
家具メーカーが1人で組み立てられると思わせて買わせた後、難解な説明書きしか渡さない。
すると助けを求める客が組み立て屋に依頼する。
こうして1件成立する毎に、組み立て屋から家具メーカーにバックマージンが支払われるといった仕組みがあったりしますか?
商売の暗闇を想像するより、自分の不器用さを嘆いた方がいいのでしょうか。
ひとまず棚をなんとかしなくてはならないので、組み立て屋に電話をすることに。
棚の購入額より高い金額を提示され、しばし言葉を失くしましたが、仕方がないので承諾しました。
やって来たのはオッサンの2人組み。
説明書きをしばらく読んだ後で、2人で組み立て始めたのですが・・・〇〇さん、違うよ。こっちを先にやらないと。だから違うって。こっちだって・・・と言い争いが。
「いや、違いますよ。こことここを合わせるって書いてあるじゃないですか」と、年上に見えるのに敬語を使っている方が反論すると、「それは違うって。ほら、ちゃんとこれ見なさいよ」と返す。
これが延々と続く。
普段の2人の関係性が窺われてしまう事態。
この2人の間に信頼関係は構築されていないようです。
言い争うのを聞きながら、プロが理解できないほどの説明書きであったのなら、私のぽんこつのせいではなかったのだと思えて、少しほっとしました。
どちらが正解だったのか、私にはわかりませんでしたが、2人のオッサンは1時間ほど掛かって棚を完成させてくれました。
予想外の出費と時間が掛かりましたが、窓の開閉で片足バランスを取る必要はなくなりました。
それにしても・・・家具メーカーと組み立て屋が裏で繋がっているという説の信憑性について、じっくり考えてみたいと思います。
久しぶりに会った友人が、素敵な腕時計をしていました。
その高級腕時計を褒めると、彼から貰ったのだと言います。
確か、聞き直すほど年下の男性と付き合っていると言っていたので、彼は相当頑張ってその腕時計をプレゼントしたのではないかと推測されました。
そういえば・・・彼女は昔からたくさんのプレゼントを貰う人でした。
美人であるというのが、その理由だろうと思われました。
さらにねだるのが上手なんだろうなぁとも思っていました。
と、急に思い出された光景がありました。
それはクリスマス会と称した集まり。
1人千円以内のプレゼントを用意することが求められました。
それをくじ引きで交換するというのです。
予算が千円ですから、それほどたいしたものが買えるわけじゃない。
当然貰えるものも、たいしたものじゃない。
それでもそのプレゼント交換は大変盛り上がりました。
彼女が貰ったのは、蛍光色のウールの手袋。
非情に残念なプレゼントと言えるのではないでしょうか。
素敵なモノでない場合、ウケるモノにして貰わないと、どんなリアクションをしたらいいか困るからです。
ところが彼女はとても喜んで、両手にはめて皆に自慢するように披露していました。
さらに「これで夜、車に轢かれなくて済むわ」などど、私が思いも付かなかった長所を見つけていたりする。
その喜び方はとても自然で嫌味な感じはない。
思わず「女優だな」と私が呟くほどの演技力。
その手袋を贈った人が誰だったのかもう覚えていないのですが、彼女の喜ぶ姿を見て、さぞかし満足したことでしょう。
彼女はねだるのが上手なのではなく、喜ぶのが上手だったんですね。
だから彼女の喜ぶ様子を見たい人が、プレゼントを贈るのでしょう。
彼女がボーイフレンドだけじゃなく、職場の人や、取り引き先の人や、習い事の仲間からたくさんのプレゼントを貰ってきたのには、理由があったんですね。
蛍光色のウールの手袋を貰った時の喜び方は見事だったと私が言うと、彼女はきょとんとした顔をしました。
彼女はまったく覚えていなかったのです。
「夜、車に轢かれなくて済むとまでコメントしていたよ」と私が言うと、「そんなこと言ってたぁ?」と大笑いしていました。
彼女にとっては記憶するまでのことではなかったんでしょうかね。