海外ドラマは一度ハマると、次のシーズンが待ちきれなくなりますね。
最近ハマっているのは「ダウントン・アビー」。
ご覧になりましたか?
賞を取りましたし、人気のシリーズなので、すでに観た方も多いかもしれませんね。
なんといっても脚本が上手い。
「ダウントン・アビー」という名の屋敷を所有する貴族一家と、その家に仕える下僕やメイドたちの物語。
1912年頃のイギリスのお話です。
時代も国も違いますし、貴族の暮らしも知らないけれど、すっとドラマに感情移入できるようになっている。
それは登場人物の動かし方が上手いから。
たくさんの登場人物がいるのに、それぞれをちゃんと動かし続けるので、観ていて飽きない。
これだけの脚本はチームで作っているのではないかと思い、ネットで調べてみたら、脚本の蘭にはたった一人の名前だけ。
びっくりです。
優しい家長がいて、アメリカから嫁にきた夫人がいて、貴族の誇りを持ち続けている姑がいて、三人姉妹がいます。
それぞれの個性があり、仲が良かったり、苦手だったり、衝突したりで目が離せない。
さらに彼らに仕える下僕とメイドたちの人生も絡んでくる。
厳しい執事がいて、冷徹な侍女がいて、いい人なんだけど口うるさい料理長がいて、可憐な台所の雑用係がいる・・・彼らのドラマからも目が離せません。
役者さんたちも見事です。
演じているというより、そこで生きているといったぐらいの生々しさで、画面の中を動き回ります。
素晴らしいドラマです。
以前観たドキュメント映画の中で、舞台監督が言っていた言葉を思い出します。
「暖炉が20個もあるような屋敷に住んでいるという設定の人物に、観客は誰も興味をもたない。だがその人物が、孤独を抱えているとわかった途端、観客はすうっとその人物に寄り添ってくれる。その心根がわかれば、時代設定や国や文化の違いなんか吹っ飛ばして、登場人物に心を通わせてくれるものなんだ」
といった内容のことを、舞台監督は言っていました。
小説を書く時この言葉を度々思い出しています。
そして、それぞれの登場人物の心根がきちんと描けているだろうかと自答します。
作家にはいろんな人がいます。
個性は勿論好きなこと、嫌いなことは違いますし、年齢もそれまで経験したことも違う。でも間違いなく言えることが1つだけ。
一番好きな言葉は「増刷」。
これを「重版」と呼ぶ方もいますが、意味は同じ。
出版した本の在庫がなくなったので刷り増して、書店に配ることを「増刷する」または「重版になる」と言います。
この言葉を嫌いな作家は一人もいない。
小説を世の中に出す時、大抵ドキドキしています。
読んでくれるだろうか。興味をもってくれるだろうかと不安でしょうがない。
そんな時「増刷」「重版」の連絡が担当編集者から入ると、すんごく嬉しい。
10センチ飛び上がるぐらいの嬉しさ。
「増刷」「重版」は作家の気持ちを強くしてくれる魔法の言葉なんです。
お陰様で「総選挙ホテル」が増刷になりました。
これは書店の方たちや読者が応援してくださったからです。
どうも有り難うございます。
増刷分は11月10日に上がるようですので、書店の皆様には引き続きの応援をお願いするとともに、未読の方は本を入手し易くなったと思いますので、この機会に是非とご案内させていただきます。
「総選挙ホテル」はお仕事小説と捉えられているようです。
ホテルで働く人たちが出てくるので、確かにお仕事小説という面もあります。
ただプライベート部分を描いたシーンもたっぷりあります。
登場人物たちのそれぞれのドラマを描いたつもりですので、お仕事小説はあんまり・・・という方であっても楽しんでいただけるのではないかと思います。
やってきた新社長が選挙をすると言い出して、社員たちは落選してしまえば、首になるという事態に直面します。
突拍子もない事態ですが、そうした極端な場面で見せる人の本性や、右往左往する人間の心の襞を描きたいと思いました。
思ったはいいものの、そうしたものがちゃんと描けているかはわかりませんが、いろんなことを感じていただけたら嬉しいです。
パジャマを着て寝ていますか?
私は・・・パジャマというモノを着なくなって、どれくらいの年月が経ったか思い出せないぐらい昔にお別れしました。
子どもの頃にはパジャマを着て寝ていました。
高校生の頃はどうだったかと記憶を辿りますが、はっきりとしません。
ここらあたりが、パジャマとの別離の時期だったように思います。
Tシャツとトレーナーにジャージで寝ます。
朝起きるとTシャツだけ洗濯済みの物と交換。
トレーナーとジャージは続行し、エプロンを付ける。
寝ている時と起きている時の違いは、このエプロンのみ。
でもって午後4時頃、またTシャツだけ洗濯済みの物と交換し、再びトレーナーとジャージは続投。
勿論エプロンも続投。
夜、入浴後にTシャツだけ洗濯済みの物を身に付けます。
トレーナーとジャージにもうひと頑張りして貰って、続投。
エプロンはそこらに放っておく。
就寝し、翌朝になると前日の繰り返し。
2、3日に1度、トレーナーとジャージ、エプロンは洗濯済みの物と交換します。
パジャマの出番なし。
先日インターホンが鳴り、宅配便が。
印鑑を取ろうとエプロンのポケットに手を入れようとして・・・手がするっと滑る。
ん?
ポケットが消えた?
エプロンを確かめてみると・・・裏返しになっていました。
いつからだろう。
サザエさんでもやらない失敗のような気がして、ちょっと哀しくなりました。
Tシャツを着替えるためには、エプロンを外し、トレーナーを脱ぐ必要があります。
また哀しくならないよう、今ではすべての表と裏を確認してから着るようにしています。
Tシャツの表と裏を確認し、トレーナーの表と裏を確認し、エプロンの表と裏を確認し、最後にポケットに手を入れて最終確認。
今のところ緊張感をもって臨めているようで、同じ失敗はしていません。
でも・・・気持ちが緩んだ時に、またやってしまいそうな気がしてしょうがありません。
服をクリーニングに出したくなったら、電話をします。
そうすると集配に来てくれます。
いつものように集配に来た男性スタッフに、ブラウスが〇枚と、セーターが〇枚と・・・と渡していきます。
と、「これはロイヤル仕上げにしましょうか?」と男性スタッフが言います。
彼が手にしているのは、私が持っている中で、ベスト3に入るほどの高額なコート。
なぜ?
ほかの服の時には言わずに、そのコートにだけ言う?
ロイヤル仕上げが一体なんなのか、私にはわかりません。
以前何度か説明を受けたのですが覚えていない。
普通より仕上がりがいいのだったか?
普通のより料金が高かったことは記憶しています。
ほかの服の時に「これはロイヤル仕上げにしましょうか?」と言われたら、「いえいえ、そんな必要はございません」と断れる。
でも、奮発して買ったコートに対して「ロイヤル仕上げにしましょうか?」と言われたら、そうした方がいいのかなと思ってしまう。
そもそも男性スタッフは、なぜそのコートにだけ言ったのか。
彼が見たのは外観だけ。
服の襟元にあるブランドタグを見たわけじゃない。
ひと目見ただけで、価格を予想できたということでしょうか。
じっと見つめてみますが、ほかの服との差はわからない。
さすがにぺらぺらな生地ではないけれど、すんごい生地とも言えない。
なのに彼はそれにだけ「ロイヤル仕上げにしましょうか」と言ったのです。
もしかすると、これは高いのよという私の気持ちが服を持つ手に表れていて、ほかの服より丁寧に扱っていたのでしょうか。
こっちだったとしても、彼の観察眼が凄いということになりますよね。
でもって、どうしたかというと「それじゃあ、お願いします」とロイヤル仕上げを依頼。
まんまと彼の手に落ちたのでした。
そういえば・・・その男性スタッフからは時々電話が掛かって来ていました。
「クリーニングに出すものはありませんか」と言うのです。
それじゃあと、出したことが何度かあった気が。
営業力のある優秀な人だったんですね。
それからは、値段が高かった服を出す時は、ドキドキしながら彼に渡すように。
見つけられ、「ロイヤル仕上げ」と言われてしまうのではないかと思うからです。
で、大抵見つかる。
しょうがないので、安い物と安い物の間に挟んでまとめて渡してみたりする。
が、優秀な彼はそんなことではごまかされない。
高かった服を見逃さない。
そして、今日も言うのです。
「これはロイヤル仕上げにしましょうか?」と。
彼に乾杯。