梅ちゃん

  • 2018年01月29日

友人A子が飼っているフレンチ・ブルドッグは、梅という名前のメス。
A子の家に行くと、「遊んで遊んで」と言わんばかりに私の足元に纏わりついてくる。

私はボールをキッチンの方に投げる。
梅ちゃんは喜び勇んでボールを追う。
そしてそのボールを銜えて戻って来る。
梅ちゃんの顔がもう1回と言っている。
しょうがないので私は再びボールを投げる。

これの繰り返し。
「もう飽きろよ」と言いたくなるほど、梅ちゃんは何度も何度もボールを投げてと、全身で訴えかけてくる。
どうして犬はボールを拾って戻って来ることが好きなのでしょう。
私にはどこに楽しみを感じているのか全然わからない。
でも要求されるので、A子とお喋りしながら延々とボールを放り続ける。
小さな体ではあっても梅ちゃんは体力がある。
梅ちゃんが疲れるまで私のボール投げは続くのです。
三十分後ようやく梅ちゃんはボールを追わなくなり、満足そうな顔で昼寝タイムに。

そうしてお喋りを楽しんだ私は帰ることに。
玄関へ向かい出すと、梅ちゃんがまた私の足元に纏わりついてくる。
その濡れた瞳は「帰っちゃうの?」と言っているようで、とても寂しそう。
「また来るね」と私は声を掛けるのですが、「そんなこと言って、すぐには来てくれないんでしょ」と、愛人かってぐらいの言葉を心の中で言ってそうな顔をする。
私はA子と梅ちゃんに同じくらい手を振って、別れたものでした。

先日久しぶりにA子の家に行くと・・・リビングの隅に梅ちゃんが。
クッションの上で寝そべっています。
走り寄って来てくれない。
近寄って頭を撫でると、少しだけ顔を上げてじっと私を見つめてきます。
梅ちゃんは老犬になっていました。

切なくて胸が疼きました。
飽きずにボールを追っていた梅ちゃんが、今ではおばあちゃんに。
皆年を取るのですが、犬の場合はそのスピードが人間より速いから、それを受け止めることが難しい。
最近はうとうとしている時間が多いとA子は言います。
そして一日でも長く、でも苦しまずに穏やかに過ごして欲しいとA子は語りました。
私もそうあって欲しいなと思います。


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