方言を

  • 2018年09月20日

小説の中に方言をどう入れるか。
これは難題です。

登場人物が地方に行くシーンがあったとして、現地の人が東京弁を話すというのもアリはアリです。
方言と東京弁のバイリンガルである方も多いですから。
でも味わいを増す効果があるので、方言を入れたいといったケースもあります。

小説「僕は金(きん)になる」には方言を入れたいと考えました。
関西弁と博多弁のネイティブな人を探して欲しいと編集者にお願いして、その方たちに方言の指導を仰ぎました。

方言を使う際の難しさは加減にあります。
性格や年齢、環境などによって、バリバリの訛りを付けるか、軽めに抑えるかといった判断が大事になります。
ちょっとした通りが掛かりの人であっても、こうしたキャラクターを考慮して程度を決めます。

もう一つ難しいのが、その方言を全国どこの人が読んでも、理解できる範囲に止めなくてはいけない点。
この単語は一般的だろうかとか、この語尾で話している人の心模様が伝わるだろうかといったことを、一つひとつ検討します。

このため時間は掛かりますが上手く入ると、その土地の感じや、人の体温が伝わり易くなると考えています。

昔OLをしていた頃、福岡営業所に電話をすることがありました。
品物が届いていないと告げると「届いてなかと?」と聞かれる。
「はい。届いてないんです」と私は答える。
相手は「ちょっと待っとって」と言い、電話口からは側にいるらしい人に「東京に届いてないと言っとるとよ」と相談する声が聞こえてくる。
更に「送ったとよ」「いつ送ったと?」「昨日」「そしたらどうして届いなかとやろ」・・・といった会話が全部丸聞こえ。
東京弁の私には、この「とっとっと」はとても愛らしく聞こえる。
にやにやしながら待っていると、「伝票を確認したら昨日出しとるねぇ。そんでも届いてなかと?」と言われたので、「はい。届いてなかとです」と返事。
つられて思わず「と」を付けて答えていました。
あっ。
と思ったのですが、先方は一切気にせず、それからも「困ったとねぇ」と「と」を連発していましたっけ。

小説「僕は金(きん)になる」に入れた方言が、作品に立体感を与えていたら嬉しいのですが。


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