ビールを

  • 2020年08月27日

夏といえばビール。
1年中飲まれているとは思いますが、1番合うのはやっぱり夏のような気がします。
夏の青空をバックに、少し汗を掻いたタレントさんが、ビールを飲んで美味しそうな顔をする・・・こんなCMをたくさん見ます。

フリーランスのライターをしていた頃・・・ビール特集だと聞くと、カメラマンは誰なのかをチェックし、一喜一憂したもんでした。
ライターとカメラマンの組み合わせは、編集者が独自にというか勝手に決めます。

取材の前日にFAXが届きます。
当時は大抵の連絡はFAXでした。
その取材概要の紙に、カメラマンの名前が書いてあります。
それを見てガッツポーズをする日と、はぁとため息を吐く日がありました。

どうもビールの撮影は難しいようなんです。
カメラマンによってはえらく時間が掛かる。

まず編集者がアポ取りしてくれたバーなどに、カメラマンと2人でお邪魔します。
カウンターやテーブルなど撮影させて貰う場所を決めると、カメラマンは準備を開始。
私はお店のスタッフに取材。
私の取材と撮影が、同じタイミングで終了するのが理想です。
そのようになるカメラマンもいましたが、中にはそうはならないカメラマンも。

まず空のグラスをテーブルなどに置いて、光の具合やら、構図やらを決めたら、グラスにビールを注いで貰ってシャッターを押す。
と、このような流れなのですが、空のグラスを前にして行う準備に、えらく時間を掛けるカメラマンが。
なにに迷っているんだよと聞きたくなるのをぐっと堪えて、チラ見しながら、私はお店のスタッフへの取材を続行。
しばらくしてようやく「ビールをお願いします」とカメラマンがお店の人に依頼。
で、すぐにシャッターを押すのかと思いきや、またカメラを弄ったり、三脚の場所を動かしたりする。
さっきの準備は無駄だったのかよと言いたくなる。

取材した内容をメモに取る私の耳に、シャッター音は聞こえてこない。
そっと窺うと・・・グラスの縁まで綺麗に入っていたビールの泡は、消えかけている。
「泡」と私はカメラマンにひと言。
私の指摘に、はっとした顔をして頭を掻くカメラマン。
ずうずうしくも、もう一杯新しくビールを用意して貰おうと、お店のスタッフにお願いしそうな気配をカメラマンが醸し出す。
そこで私は「注射器持ってるんで」と言う。

注射器の先端をビールに刺し込み、しゅぽしゅぽと上下にピストン運動をさせると、泡が復活します。
ビールの撮影で、時間が掛かるカメラマンだとわかった前日に、バッグに注射器を入れておいたのです。

「用意がいいね」などとほざくカメラマンに、お前が用意しておけと心の中で叫ぶ。

中にはささっと撮影が出来るカメラマンもいましたが、こんな風に時間が掛かるカメラマンもいました。

ビールのCMを見て当時を思い出しました。
とんでもなく時間を掛けて撮影していたカメラマンは、今どうしているかしら。

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