住まいを

  • 2020年11月12日

小説の中で登場人物がどんな家に住んでいるかを、しっかり書くようにしています。
それによって年収や生活レベルを、想像し易くなるであろうと考えるからです。

小説「諦めない女」に登場する京子は、タワーマンションに住んでいました。
その後京子はこのタワーマンション近くの、古いマンションに移り住みます。
住まいの変化は、京子の人生に変化があったから。
執筆していながら、それまでの暮らしぶりとの違いが、なんとも切なくなりました。

広さ、場所、どう暮らしているか・・・住まいには、その人の価値観や好みが反映されます。
駅から近いのがいい人。
家賃が安いのがいい人。
ペットと暮らしたい人。
こうした好みは、その人なりの一面を見せてくれます。

私はどうかというと・・・打ち合わせが出来る部屋という視点で、今の部屋を探しました。
以前住んでいた部屋がとても狭くて友人は呼べるけれど、打ち合わせなんて、とんでもなかったのです。
また交通の便が決して良いとはいえない場所にあり、自宅近くの喫茶店まで、編集者を越させるのも忍びなかった。
そこで編集者も来易いターミナル駅近くの、ホテルのラウンジで打ち合わせをするように。
そのラウンジまで、私は電車を2本乗らなくてはいけませんでした。
メンドー臭い。

そこで引っ越しを検討した際、今度は自宅で打ち合わせが出来る部屋がいいと考えました。
この視点で部屋を選びました。
そして部屋全体の半分ほどを来客スペースに充て、2人掛けのソファを1つに、1人掛けのソファを2つと、ローテーブルを用意。
これで、打ち合わせの度に靴を履いたり、バッグを持ったり、電車を2本乗ったりしなくても済むぞと喜んだものでした。

ところが。
物がどんどん増えていき、置き場所がなくなっていく。
そんな時ソファやローテーブルが目に入る。
ひとまず置いておくか、となる。
この「ひとまず」という単語は、時として「永遠に」という単語と同意語になったりします。
気が付けばソファとローテーブルには物が置かれ、それらが積み重なる状態に。
で、来客予定の30分ほど前になって、慌ててソファの上の物を片そうとするも、それらを置ける場所があるのなら、そもそもそこに置いていない訳で、そんなスペースは見つからない。
部屋の中をぐるぐる探し回った挙句、バスタブに隠すことになる。
来客の度に物をバスタブに隠し、ゲストが帰ると、またソファに戻すというのを繰り返しているうちに、当然ながらメンドー臭いという着地点に落ち着きます。

やがてマンションのすぐ近くにある、ホテルのラウンジを利用するように。
靴を履きバッグも持たなくてはなりませんが、電車には乗らずに済みます。
それになんといっても、物をバスタブに移動しなくても済みます。
ここ数年はもっぱら、打ち合わせにはこのホテルのラウンジを利用しています。

となると、そもそも打ち合わせをするために選んだ部屋というのは、なんだったのかって話になります。
今更自分が、整理整頓が出来る女になれるとは思えません。
己の性格を考慮に入れた上で、住まいを選ぶべきでした。

部屋選びに成功するにせよ、失敗するにせよ、どんな部屋で、どんな暮らし方をするのかは、その人の一面を窺わせます。
こんな視点で小説を読んでみるというのはいかがでしょうか。


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