無の状態

  • 2021年04月12日

友人A男の趣味は釣り。
密にはならない場所で楽しむ趣味なので、コロナの影響を受けず、一人で川に行っているそうです。

退屈しない? と尋ねました。
すると「退屈する」と回答。
なんでも退屈するために、わざわざ釣り道具を持って、川に行っているといっても過言ではないんだとか。
とっても退屈したいのだと言います。

実際魚が餌に食いついてリールを動かした、なんて時間はほんの数分で、それ以外のほとんどの時間はボーっとしているだけ。
川のせせらぎを聞きながら、ボーっとする時間が最高なんだとA男は言います。

その日、釣りを始めてまず頭に浮かぶのは、仕事での嫌なこと、家庭内のいざござ、心配事など。
そういうことを考えている間の気分はブルー。
でもやがて考えるネタも尽きてくる。
すると無のスポットにすとんと落ちるらしい。
心がゼロになっている感覚に気が付いて、それがとても気持ちいいのだとか。

写経を始めた友人B子。
彼女もまた同じようなことを言っていました。
「文字を書いているでしょ。そうするとね、気が付くと無の状態になっているのよ」と。

なんか……羨ましい。
これまでの人生を振り返ってみましたが、彼らがいうような無の状態の経験はありません。
ちょっと損をしているような気分。
と、友人C子に愚痴ったら「ウオーキングとかランニングをしてみたら? やってる途中でそういう感覚になるよ」と言いました。
なりません。
と、私は速攻で否定。
以前健康のために自宅近くを一時間ぐらいかけて、ウオーキングしていたことがあります。
その歩いている間、私の脳内は活発に動いていました。
どうして歩こうなんて思っちゃったんだろう。こんな暑い日は止めておけば良かった。わっ。犬の多頭飼いだ。最初は1頭から始めたのかしら。2頭目を飼おうと決めた時と、3頭目を飼おうと決めた時は同じ感覚だったのかな。うっそー、あのオジサン、スラックスにアイロンを掛けるって習慣がないのかな。あっ、またここにあったお店、潰れちゃったんだ。場所としてはいいのに……なんて具合で、考えることがいっぱいあって忙しいぐらい。
無の境地なんて全然訪れませんでした。

心がゼロになって気持ち良くなる……そんな感覚を味わえる日を待ち侘びています。


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