なんのお仕事をしているんですか?

  • 2021年06月10日

医者から「なんのお仕事をしてるんですか?」とよく聞かれます。
あー。
と、心の中でため息。
何故医者は職業を聞きたがるのでしょう。
診察に必要な情報なのでしょうか。
その症状の要因に職業が関係しているかどうかを、確かめているとか?

その後の医者と私の展開が読めるので、なんだかなぁと思いながらも嘘を吐くわけにもいかず「作家です」と答えます。
ほー。
日常生活で「ほー」という相槌は、そうそう聞くものではないと思うのですが、私は診察室でしばしば耳にします。
「どんなものを書いているの?」と医者。
それ聞いてどうするのさ。
もう完全に診察ではなく、ただの好奇心ですよねと言いたくなる。
しょうがないので「どんなもの・・・エンタメ小説と呼ばれているようなものです」と答えます。
「なんにもないところから生み出すんだから、大変だ」と医者は言います。
「まぁ、そうですね」と頷く私。
医者は診察室に入って来た看護師に「作家さんなんだって」と、私の職業を報告したりする。
だから、それ、診察ですかって。

恐らく作家あるあるで、多くの作家が似たような経験をして、心中で「それ聞いてどうすんのさ」と思っているはず。

先日、胃の定期検査を受けました。
これまで行っていた病院は止めて、ネットで調べた初めの病院へ。
検査終了後に診察室で医者の前に座ると・・・内視鏡で撮影した胃の内部の画像を印刷した紙を見せられ、説明を受けました。
そして医者が質問を口にしました。「お仕事はなにを?」
出た。
「作家です」と答えると、妙に納得したような顔で「それではストレスがかかりますね」と言う。
「まぁ、そうですね」と私。
心中では、生きている限りすべての人にはストレスがあるだろうにと思うものの、口には出せない。
そして医者は、作家の仕事とストレスを結び付けて、薬を出してお大事にという流れにもっていきたいのだなと理解する。
胃は不調をストレスのせいにし易い臓器ですしね。

案の定、私が想像した通りの台詞を医者が発しました。
恐らく患者がどんな仕事を答えたとしても、「それではストレスがかかりますね」と言うような気がします。
働いていませんと答えたとしても「家に籠っている生活はストレスですよね」と話をもっていくのでは?
取り敢えず職業を聞け。それをストレスと結び付けて、お帰り頂け。
と、医科大学で教えているんじゃないかと思ってしまうんですが、本当のところはどうなんでしょうかね。

お金の使い方

  • 2021年06月07日

今、どうしているだろう。
時々そう思うのは、会社員時代の同僚A子のこと。

給料前になると、コンビニでバターロールパンを1袋購入。
それだけで1週間を乗り切っていました。
1日1個の計算です。
辛い1週間が終わり給料日が到来。
するとA子には笑顔が戻りフツーの食事に。
これを毎月繰り返していました。
なにか特別なことがあって、今月はピンチになったというのではなさそう。
根本的なところに問題があるとしか思えない。
確かに給料はびっくりするほど安かったのですが、額は決まっているのですから、その中で遣り繰りをしなくてはいけないと思うのですが、A子にはそれが難しいようでした。

数年後にA子は退職。
私も転職をしました。

それから5、6年後のことです。
表参道駅で猛ダッシュする女性を発見。
大人の女性が駅で猛ダッシュする姿というのは、あまり見ないので、驚いてその女性を目で追うと・・・A子でした。

なんか・・・頑張れ。
そう彼女の背中に声を掛けました。

A子は今、どこで、どうしているでしょうか。
ちゃんと暮らしているでしょうか。
先々のための資産設計を、計画通りに実行出来ているでしょうか。

小説「終活の準備はお済みですか?」には終活相談員が登場します。
三崎清、53歳。
ファイナンシャルプランナーに、自分の資産について提案して貰ったら・・・このままだと70歳で貯金はゼロになりますよ、と言われてしまいます。
すっかり目が覚めて慌てる清。
大雑把な計算をして、なんとかなると自分の目を誤魔化し続けてきた結果、老後の準備が出来ていなかったのです。
清は副業探しを始めます。
出来ることならその副業で、定年後にも稼ぎたい。
というか、稼ぐしかない。
すったもんだの結果、清がどんな選択をするのかは小説で。

そういう私も、全然他人事じゃないんだよなぁと思いながら書いていました。

シェフの舌

  • 2021年06月03日

フリーライター時代のこと。
その日、取材に行ったのはレストラン。
繁盛店でした。
オーナーシェフがまだ若くてびっくり。
成功の秘訣は? と私は尋ねました。
すると彼は言いました。
自分の舌に合わせないことだと。
合わせない? 合わせるんじゃなくて? と驚く私に、シェフは説明をしてくれました。
自分はプロなので繊細な舌をもっていて、様々な味を理解出来るが一般の人は違う。
だから自分の舌に合わせた味のものを、出さないようにしている。
一般の人が美味しいと感じられるものを出す。
どうしたら一般の人が美味しいと感じられるかといえば、味をはっきりさせること。
だから自分が美味しいと思う味より、ほんの少し濃くしています。
こうシェフは言ったのです。
なるほどねぇ。

それから数年後に、アニメ界の巨匠、宮崎駿さんのドキュメンタリーを見ていたら・・・スタッフにダメ出しをしていました。
リアルじゃダメなんだ。
ほんの少しオーバーに身体を動かすようにしないと、泣いているとわからない。
少しだけ大袈裟に。
と、仰っていました。
この時、以前シェフから聞いた話を思い出して、共通点があるなぁと思いました。

私は小説を書いている身。
この2人の言葉を胸に刻みました。

新刊小説「終活の準備はお済みですか?」には、繁盛店のオーナーシェフが登場します。
原優吾は33歳。
以前取材したシェフと同じように、自分の感覚と一般の人の感覚の差を理解し、味の調整が出来る人。
優吾は野心家で日本国内に複数の店をもち、海外でも勝負したいと思っていました。
しかし大病を経験し人生観がガラリと変化。
今の1店舗を大切にしようと考えるようになっていました。
そんな優吾が定期検査のために病院に行くと、検査入院をするよう医者から言われます。
再発したのか?
不安に押し潰されそうになります。
そんな中で彼がどんな終活をするのか・・・本書でお確かめくださいね。

士業

  • 2021年05月31日

10年ぐらい前のこと。
その日の飲み会に初参加の男性がいました。
40代の彼は一級建築士だと言いました。
なんか、凄い。
「儲かってウハウハですか?」と尋ねると、いやいやと首を左右に振りました。
そして「仕事がなくて、コールセンターでバイトしてます」と答えました。
のけ反りそうになりました。

一生懸命勉強をして、難しい試験に合格して資格を取っても、それでウハウハになる訳じゃないんですね。
士業も大変なようです。

拙作「嫌な女」を執筆する際、弁護士さんに取材をしました。
ここでも私は「儲かってウハウハですか?」と質問。
すると「どこの世界でもそうだと思いますが、儲かっている人と、そうでない人がいます」と大人な回答が。
弁護士事務所を開きました。
で? ってな感じで、それだけで仕事が舞い込んでくるはずもなく、営業をして依頼を一つひとつ貰っていく。
それを誠実にしっかり務めることで実績となり、また他の人を紹介してくれるようになっていく。
これを続けていくしかなく、また続けていても、商売として安定して儲けられるとは限らないので、非常に不安定だと言っていました。

新刊「終活の準備はお済みですか?」には行政書士が登場します。
名前は神田美紀。
32歳のシングルマザーで実家暮らし中。
OLをしながら行政書士の資格を取った美紀は、実家で開業します。
でも仕事は全然入ってこない。
片っ端から営業の電話をしても、誰も話なんて聞いてくれない。
両親にやっかいになっているので、なんとかやっていけてるといった状態でした。
育児は両親に任せて次の恋を模索中。
ところが。
親の介護をしなくてはいけなくなります。
それまでなんだかんだ言いながらも、両親に甘えていた生活から一転。
美紀は仕事と育児と介護を担うことになり、フル回転の毎日に。
そんな慌ただしい生活の中で、美紀が見つけるものは・・・。

興味をもたれた方は本をお読みくださいね。

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