止められないもの

  • 2017年05月04日

ヘビースモーカーの友人がいます。
仮にA子としておきましょう。

そのA子が飲み会の席で突然言い出しました。
禁煙に成功したと。
その場にいた私を含めた3人は「はいはい」と軽く受け流す。
それまでにも何十回と、禁煙に成功したという宣言を聞いていたので「また言ってるわ」ぐらいの感覚なのです。
A子自身は禁煙したいと強く思っているようで、禁煙外来に通ったりするのですが、未だ成功していません。

小説の中での喫煙シーンは随分と変わりました。
昔の時代設定であれば、タバコは大人の格好いい仕草のひとつとして描きます。
でも今の設定なら、意志が弱い人というキャラを補強するのに使ったりします。
タバコにまつわる世間の意識が変わったからです。

人によって、どうしても止められないことというのはあるものです。
買い物を止められない友人がいます。
B子はOL時代からその危険性をもっていましたが、私は見過ごしていました。
自宅暮らしだったB子は、稼いだ給料はすべて自分のお小遣いにできました。
家にはお金をいれず、毎日母親が作ってくれたお弁当を持参しての出勤という、とても恵まれた環境にいたのです。
会う度に新しい服やバッグを身に着けているB子を、凄いなぁと思って見ていましたが、そこに潜む危険性には気付いていませんでした。

B子が結婚して5年ぐらい経った頃、緊急招集がかかりました。
B子が離婚するかもしれないので、取り敢えず励ます会を開くとのお達しでした。
その会に出向くと・・・久しぶりに会ったB子は少しやつれたように見えたものの、高級そうな服を着た、昔と変わらぬお洒落な姿。
が、B子が話し出したのはその素敵な服で隠していた実態でした。
専業主婦になってもOL時代のように買い物をしてしまい、気が付けば家計は赤字に。
そこで夫には内緒で両親からお金を援助して貰い、毎月補填していたらしいのですが・・・夫が友人のファイナンシャルプランナーに相談しようと言い出した。
B子はそんな必要はないと言って、隠し通そうとしたらしいのですが、やがて不審に思った夫が預貯金を調べ出したそうで。
夫が独身時代に蓄えいてた定期預金などが解約されていて、資産が0になっていたことがバレてしまった。
なにに使ったのかと詰問され、クローゼットの奥に隠していたブランドモノの服やアクセサリーなどを見せたら「別れよう」と言われたとのこと。

こんなB子の話を聞いた後、友人としてはどういう言葉を掛けるのが正解なのでしょうか。
私をはじめそこに集まった友は、ただ瞬きを繰り返すだけでした。

えっ?
それからどうなったかって?
B子は離婚して実家暮らしに戻った後、再婚しました。
二十歳年上の二度目の夫は、資産家。
B子にべた惚れの夫ではあってもしっかりしている人らしく、B子には財布は渡さず、当然ながらクレジットカードももたせない。
買い物をしたい時は夫と一緒に行って、夫に買って貰う。
買って欲しいB子は、しょっちゅう夫とデートすることになる。
これで上手くいっているようです。
夫が資産家だからでしょうが。

私のどうしても止められないものとはなんだろうと考えてみると・・・ありました。
炭水化物。
好きなんですね、炭水化物。
オカズへの執着は薄いのですが、炭水化物への執着は強い。
栄養バランスのとれた食事よりも、腹にたまる実感のある炭水化物を食べたい。
幼少時代の貧しい食生活が垣間見えるようだと、よく言われます。
普段安いお肉ばかり食べているので、たまにお呼ばれして高級なお肉を食べると、お腹が痛くなります。
これも幼少時代の貧しい食生活のせいでしょうか。

ハマっているテレビドラマ

  • 2017年05月01日

最近ハマっているのが、テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」です。
とても話題になっていると知ってはいたのですが、手を伸ばさずにきました。
だって作品紹介を読むと、7つの国だの、戦うだの、私の心にヒットする言葉が出てこないんだもの。
しかもタイトルのビジュアルには甲冑姿の男たちが使われていて、私の好奇心は微動だにせず。

ある日のこと。
有名な賞にノミネートされたとする海外のテレビドラマを見ました。
1話を見終わった感想は、「つまんねぇ」というもの。
もしかしたら2話から盛り上がっていくのかもしれませんが、それに賭ける気にはなりませんでした。
なに見ようかなぁと次に見るテレビドラマを探していた時、どうせつまらないものを見た後だから怖いものなしだぜと、なぜかなんでも来いの状態になっていました。
そこで「ゲーム・オブ・スローンズ」を見てみることに。

これが面白い。
どうして誰も私に強く薦めてくれなかったの? と言いたいぐらい。
まず脚本が素晴らしい。
たくさんの登場人物を見事に描きつつも、さばいていく切れ味が最高。
ただの国盗り物語ではなく、その架空の時代、架空の町に生きる人々の息遣いや葛藤が描かれていました。
そしてたくましく生きる姿も。
また「制作費が潤沢ですが、なにか?」と言わんばかりの贅沢なシーンがいっぱい。
1シーンにつぎ込める予算が多いと、細部にまでこだわれて、それがひいては映像としての厚みを作れるのではないかと勝手に想像していますが、どうでしょう?
制作費が潤沢であれば、スタッフの数も時間も多くかけられますからね。
丁寧に作られた1シーン1シーンによって、作品の質が高くなっていると感じました。
そしてなんといっても構成が見事。
構成がしっかりしているので、作品世界にすんなりと入り込め、様々な登場人物に心を添わせることができます。
人気が出るわけだよなとすっかり納得しました。

小説も構成はとても大事です。
最初にしっかりと構成し、隅々に気配りをしておいてから書くようにしています。
でもあまりにきっちりと最初に決め過ぎてしまうと、作品が窮屈になっていくこともあります。
登場人物たちが好きに動けるだけの余白を残しておいた上で、構成するのがミソ。

新刊「諦めない女」は読んでいただいたでしょうか?
この小説は特殊な構成になっています。
それが成功しているかどうかはわかりませんが、その構成によってサプライズするようになっています。
未読の方には、まずは手を伸ばしていただきたいと願っています。

バレエシューズ

  • 2017年04月27日

バレエシューズを買いました。
それがこちら。

色がわかりにくいですが、ダークグレーです。

靴屋で働いていた頃は、7センチヒールの靴が支給されていて、それ以外履いてはいけないというルールがありました。
その7センチヒールの靴を履いて1日中立ち仕事をしていたのですから、若さって凄いと我ながら感心します。
30代に入ると5センチヒールになりました。
7センチはキツイ。
でもローヒールは嫌。
ということで、踏ん張って5センチ。

が、これも辛くなってきた。
去年あたりからバレエシューズを愛用するように。
なんたって楽。
これにはもう1つ理由が。
足の両親指の爪が巻き爪になってしまい、ワイヤーで矯正中なのです。
歯の矯正のようなもんですね。
巻いてしまい、肉に食い込んでいる爪を正常にするため、ワイヤーの力で矯正していくというもの。
痛みはありませんが、さすがにヒールの靴は履かない方がいいだろうとの判断です。

私の足を見た女医は「これは、全然歩いてない足だね」と言いました。
そのクリニックは2階にあったのですが、私は迷うことなくエレベーターを使用していたため反論できず、苦笑いでごまかしました。
その女医によれば、爪はなにもしなければ巻いていくものだそうです。
それでは何故手の指の爪は巻かないのかといえば、手の指を動かし使うことで、巻いていこうとする力と反対の力が加わり、その圧によって、巻くのがストップさせられているから。
足の指も同様に、たくさん歩いたり走ったりすることで、下から上へと圧をかければ、巻く力に勝てて、巻かなくなるそうです。
歩こう。
そう思いました。

新刊「諦めない女」には歩き続ける人が登場します。
娘の行方を捜す母親です。
娘が行方不明になり、母親は一人捜し続けるのです。
休みの日になると、今日はこの駅、次の週はその隣の駅と、ビラを配って歩くのです。
毎週毎週歩き続けます。
それが何年も続きます。
その母親がそれからどうなっていくのかは、小説で。

頑固さ

  • 2017年04月24日

アスリートの引退会見は寂しいですね。
永遠に競技者ではいられないとわかってはいても、胸にこみ上げる寂しさを小さくはできません。
浅田真央選手の引退会見を見た時も、寂しさを感じました。
大会の度に、身内のように一喜一憂したことが思い出されました。
お疲れ様でしたと声を掛けたいですし、たくさんの感動を有り難うとお礼を言いたい気持ちです。

一流選手の共通点は頑固さでないかと思っています。
コーチや監督の言うことを素直に聞くのも大事だけど、自分が信じた道を突き進む頑固さも大事。
この相反することを両立しなくちゃいけないってのが、難しいですよね。
でもコーチの人生ではなく、監督の人生でもなく、自分の人生を生きるなら、時には忠告をシャットアウトして我が道をいくしかないことも。
そうやってたくさんの壁を自ら打ち砕いた人だけが、一流選手になれるように思います。

「頑固」という言葉はどちらかというとネガティブに使いがちですが、「信念」と置き換えると途端にポジティブな色が付きますね。
「頑固」と「信念」はほぼほぼ近い言葉なのに不思議ですね。
私はどちらの言葉も好きですし、どちらももっていたいと思っています。

新刊「諦めない女」の中には、頑固な女性が登場します。
ある日突然娘が行方不明になった母親、京子。
京子は周囲の人たちがなにを言おうが、娘は生きていると信じて捜し続けます。
頑固さMAX。
月日が経つにつれ周囲の人たちは、希望的な言葉を京子に掛けられなくなります。
やがて言い出します。
前を向いて――。
それは娘の不在を受け入れて、それでも強く生きていってという励ましの言葉。
京子はそうした言葉をシャットアウトします。
そのうちに京子に手を差し伸べようとしていた人たちが、離れていきます。
孤立しても京子の気持ちは揺るがない。
この京子がどうなっていくかは、「諦めない女」をお読みくださいませ。

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