観光地で、「写真撮って貰えますか?」とカメラを渡される確率が、私はとても高いです。
例えばこっちが4人連れでいたとして、そう言われるのは私だけ。
ぼんやりしていて暇そうに見えるのでしょうか?
写真を撮ってあげるのは全然いい。
だが問題がひとつ。
私は写真を撮るのが下手なのです。
大抵「ここを押して貰えばいいんで」と言われます。
この台詞には、オートフォーカスなので、ボタンを押せばどんな人でも上手に撮れるんで、心配しないでねといった意味合いが含まれているように思います。
が、こうした予想を簡単に覆すのが私。
なにが主役なのか分からない写真を撮る天才でもあります。
なにがいけないのか。
センスでしょうか?
結局、私は期待を裏切るレベルの写真を撮って、カメラを持ち主に返すのでした。

昔、靴のメーカーで会社員をしていた頃は、商品をPRするのが仕事でした。
普通の会社であれば、プロのカメラマンに依頼して、商品を200パーセント素敵に見せるような写真を用意します。
が、私がいた会社の予算はゼロ。
プロに頼むお金がない。
だったら、どうする?
自分でするしかない。
と、こういう哀しい理由で、この私が写真を撮るはめに。
会社の一眼レフで靴を撮影。
しかしながら使えるレベルの写真が一枚もない。
商品を実際より悪く見せている写真ばかり。
これには困りました。
結局、会社内で写真が上手な人を探し出し、その人に拝み倒して撮って貰っていました。
新装版の文庫が発売になった「嫌な女」には、写真館でのエピソードがあります。
男から小金を巻き上げて暮らしている夏子が、写真館にやって来ます。
男と二人で写真撮影に臨みます。
本気で男とのツーショット写真が欲しいのか、それとも騙すための作戦のひとつなのか。
二人は写真を撮って貰い帰って行きます。
が、これには後日談が。
夏子と写真館の館主の間で、ちょっとしたトラブルが。
その理由がなんとも夏子らしいものでした。
興味を覚えた方はぜひご購入ください。

小娘だった頃。
好きなタイプの男性について、友人らとあれこれ語り合い盛り上がっていました。
楽しいひとときです。
皆、好き勝手な妄想を膨らませて、理想の異性のタイプを作り上げていく。
で、実際に友人に彼氏が出来る。
友人らに彼氏を紹介する場が設けられて面通し。
初めて対面した彼氏を見て「好きなタイプの話はどこにいった?」と毎度つっこむことに。
散々聞いてきた理想のタイプとは似ても似つかない人を、彼氏だと友人らに紹介出来る勇気にびっくり。
理想のタイプまんまの人と出会えればいいけれど、世の中はそんな風にはなっていない。
好みのタイプとは遠い人なのだけれど、ちょっと気になるようになって、一緒にいる時間が楽しくなっていく。
そして交際。
友人らに紹介すれば、総ツッコミを受けるであろうことは分かっているけれど、ま、いっかといった心持ちになっているのであれば、その交際は順調に進んでいく確率高し。
新装版の文庫が発売された「嫌な女」に登場する夏子は詐欺師。
男たちから小金をせしめて生きています。
そんな夏子が結婚した相手は、意外な人でした。
夏子の尻拭いをさせられてばかりの弁護士、徹子は、彼女が結婚したことに驚くのですが、その相手を見て更に驚きを深くします。
男は地味でお金持ちじゃないのです。
夏子にどんな心境の変化があったのだろうかと徹子は思います。

この徹子もまた、彼女なりの理由で結婚し、その後紆余曲折が。
徹子が勤める弁護士事務所の所長にも色々ある。
他の登場人物たちそれぞれにも、色々な結婚生活があります。
様々な事情と選択があって、成り立っている暮らし。
嵐に襲われた時に身を寄せ合って過ぎ去るのを待つのか、それともバラバラで逃げるのか。
「嫌な女」は十人十色の人生を味わえる小説ですので、ぜひお買い求めを。
これまでどれだけの美容院を転々としたか。
あなたはずっと同じ美容院に通っていますか?
それとも毎回違うところ?
小学生の頃は、自宅から一番近くにある美容院に行っていました。
近所の子どもも大人も皆、そこに行く。
だからなのか、近所の住民たちはほぼ同じ髪型でした。
中学生になると、ちょっとこじゃれた美容院へ15分ぐらい歩いて行くように。
一番近い商店街ではなく、大きな商店街まで歩き、そこに店を構える美容院に。
たったそれだけのことなのに、母親からは「お年頃ね」などと冷やかされました。

高校生になると、電車で十分ほどの大きな街にある美容院に鞍替え。
成長して行動範囲が広がるにつれて、美容院を見つけるエリアも広がりました。
大学生になると、雑誌で見つけたオシャレな美容院を予約。
わざわざ銀座で髪を切って貰っていました。
私の美容院に傾ける情熱は、この時点がピーク。
やがてどこでも同じという結論に辿り着き、美容院選びの視点が変わりました。
まず便利な場所にあること。
自宅か職場から徒歩10分以内で、予約方法が簡単で、待たされず、手早くやってくれて、料金が安いところ。
この条件に合う美容院を転々としてきました。
そして遂に私にとっての終着点を発見。
それは自分でカットするという方法。
この便利さを知ってからはもう戻れない。
このままセルフカット道を突き進んでいく所存です。
新装版となって刊行された小説「嫌な女」には、美容院の店主が登場します。
主人公の一人である夏子と、トラブルになります。
困った夏子は、遠戚である弁護士の徹子に連絡。
解決を委ねます。
夏子の主張と、美容院の店主の主張には大きな違いが。
真相を知るために徹子は調べ始めます。
そこで見えてきたものは・・・本書でご確認ください。
本日は敬老の日。
人生の先輩を敬っていますか?
人生の後輩から敬われていますか?
すべての人は平等に年を重ねていきます。
これをどう捉えていますか?
抗っていますか?
それとも受け入れていますか?
私は楽しみたいなと思っています。
「こんなこと昔はなかった」と驚くこともしばしばですが、加齢を今、経験中なのだと考え、しょうがないかぁと笑って過ごすようにしています。
新装版文庫「嫌な女」に登場する人物たちも、小説の中で年を重ねていきます。
弁護士の徹子は、若い時には甘く見られないよう、実年齢より年上に見せようとしていました。
月日を重ねて、そんな工夫をする必要がなくなります。
加齢を受け入れているような徹子ですが、これだけは譲れないというラインが。
それが靴。
詳細は小説で。
一方の夏子は抗う。
必死に若作りをします。
はたから見ていると痛々しいぐらいの悪あがき。
そんな夏子ですが、実は人一倍自分の年齢をシビアに見る目ももっている。
なにせ夏子は男たちを騙して、小金を巻き上げなくてはいけない。
若い頃と同じ手法では通じないことは、身をもって知っているのですから。

だから年齢と時代に合わせて、騙す手法を変えていきます。
まるで老舗の優良企業のよう。
根幹は変えずに、時代に合わせてチューニングし、商品の売り方を変えていくという手法を取っているのです。
やり手ともいえる夏子ですが、残念ながら詰めが甘い。
しばしばトラブルに陥ってしまう。
年を重ねても全然変わらない部分と、年を重ねて変わった部分、どちらもあるのが人間。
徹子と夏子の年の重ね方を、味わってみてください。