駅で、電車の中で、カフェで、とにかくスマホを覗いている人たちは多い。
私はそうした人々や、景色などを見るのに忙しくて、スマホは大抵バッグの中に入れた状態です。
そんな私でもあまりにも待機時間が長くなると、キョロキョロするのに疲れてくる。
先日、病院でのこと。
予約してあるのに、延々と待たされていました。
そこで私もスマホを取り出しました。

なにをするかというとメールの整理。
届いたメールの多くは勝手に送り付けられたもの。
なにかを宣伝するメールです。
どこかの段階で、そうしたメールの受け取りを許可してしまったのか、物凄い数のメールが毎日スマホに届きます。
そうしたメールの着信拒否のやり方が分からないのと、その方法を調べるのがメンドーで、受信ホルダーには大量のメールが残っているのです。
これらのメールの中から、不要なものをどんどこ捨てていきます。
そうした作業をしているうちに、なんだかたくさんの画面が、出ている場所があることに気付く。
以前ネットで調べた時のサイトの画像や、地図アプリで調べたルートの画像、知人からのメールを開封した状態の画像・・・と、たくさんある。
これはなに?
私はスマホでなにかをしたら、終了する度にその画面は閉じているつもりでいたのですが、閉じていませんでしたか?
もしかして何年も開きっ放しでしたか?
と、誰かに質問したくなる。
ネットで検索してみたら・・・どうやらそれらはタブと呼ぶようで、そのタブを閉じなければ終了したことにはならない模様。
そういうの、教えといてよ。
と、誰かに文句を言いたくなる。
次にタブの閉じ方を調べてみたら、画面の隅にある×印をタップすればいいと書いてある。
でも私のスマホに大量に残っているタブには、×印なんかない。
目を皿のようにして探したけれど、ないものはない。
どうする私。
今一度ネット検索してみるも、×印をタップとしか出てこない。
使用しているスマホのメーカーの、サイトにあった取説でも調べてみましたが、方法は見つからない。
大きな壁にぶつかり、隣で診察を待っている見ず知らずの人に相談してみたくなる。
ふと「他の方法」と検索窓に追加入力すればいいかもと思い付き、そうしてみたら・・・その画面に指を当てて、上の方にスライドさせるとの情報が。
やってみたら・・・画面が消えました。
こんな方法でタブを閉じるなんて。
誰かが教えてくれなければ、絶対にわからない。
こんな段階で躓く人がいるとは、メーカー側も予測出来ていなかったんでしょうかね。
素人を舐めんなよ。
素人はこんなところで躓くんだからな。
それから大量の画面を一つひとつ消すことに。
画面に指を当てて、シュッと上に動かす動作が、なんだか忍者が手裏剣を飛ばすような感じで、ちょっと楽しくなってくる。
そうしてすべてのタブを閉じ終えました。
こうして何年もの間、開きっ放しだったタブを閉じたのでした。
いやはや、自分の無知さにびっくりしました。
食品サンプルが人気だという。
作り方を学ぶ体験教室への参加希望者が増えていて、活況を呈しているらしい。
食品サンプルは映えるので、そうしたことも人気の要因かもしれませんね。
以前、街を歩いていたら、蕎麦店の前に外国人を発見。
彼が熱心に写真を撮っていたのが、ショーケースに並ぶ食品サンプルでした。
そういえば、仕事で海外に頻繁に行く友人が、日本からの土産として、食品サンプルのキーホルダーを用意すると言っていました。
低価格で大量に購入出来る上に嵩張らないので、土産として食品サンプルのキーホルダーは、最適なんだとか。
プレゼントすると大抵物凄く驚かれて、喜ばれるそうです。
キーホルダーならばショーケースに並ぶ食品サンプルより、クオリティは甘そうな感じがするのですが、それでも海外の人たちを、驚かせるには充分なんでしょうかね。
珍しさもあるのでしょうが。

先月のこと。
出先での打ち合わせが終わったのが13時。
お腹グーグーです。
どこかの店で昼食を摂ろうと考えました。
初めての街でどこに、どんな店があるのかわかりません。
取り敢えず駅に向かって進めば途中にあるだろうと、歩き出しました。
しばらく歩くと昔ながらの洋食店が。
ショーケースに食品サンプルが並んでいました。
ナポリタンを掬ったフォークが宙に浮いています。
よく見かける食品サンプルです。
が、物凄く陽に焼けていて白っちゃけている。
だからとても不味そうに見える。
食欲は全くそそられない。
これ、食品サンプルあるあるですよね。
年代物の食品サンプルが、却って客足を遠のけることになっているのです。
ショーケースの中にあっても毎日日差しを浴びているので、劣化スピードはかなり速い。
だから小まめに、新しいものに交換した方がいいと思うのですが、一度買ったら永遠にそれでいいと考えている店主が多い模様。
こうした白っちゃけた食品サンプルを、しばしば見かけます。
なんか、残念です。
食品サンプルの劣化と、店の味に因果関係はないとわかっていても、不味そうなものを見て「よし、この店にしよう」とはならない。
結局、そこの店はパスし、駅前のチェーンのファストフード店に入りました。
店の入り口はとっても大事。
客が入店するか、しないかの決断をする場所です。
劣化した食品サンプルを見せるぐらいならいっそのこと、なにもない方がいい・・・と思うのですが。
料理の動画を見るのが結構好きです。
当初検索窓に入力していたのは「料理」の2文字。
すると腕に自信のある人たちが、料理を作る過程を映した動画がずらりと出てきました。
これらを楽しんでいたのですが、そのうちにこんなに手間の掛かる料理は絶対に作らないから、なんの参考にもならないと思うように。

そこで検索窓に「料理」の他に「時短節約」の文字を入れてみると、それまでとは違った動画が出てきました。
「1人前百円以下」とか、「3千円で1週間献立」とか、「15分で一汁三菜を作る」などという、心魅かれるタイトルの番組がズラリ。
こっちはメッチャ参考になります。
出来ていく過程もエンタメとして面白い。
シバリがある分工夫と知恵が詰まっていて、感心することばかり。
こうした動画の視聴は楽しいのですが、1つ問題が。
空腹の時に見てしまうと、我慢出来なくなってつい間食してしまいそうになること。
だからお腹がいっぱいの時にだけ、見るようにしています。
お腹が空いていて今、料理動画を見たらヤバそうな時に見ているのは・・・ハイソな暮らしをしている海外在住のマダムを紹介する番組。
夫が伯爵だとか、飲食店を何店舗も経営しているといった、日本人のマダムの自宅にカメラが入り、当人に部屋を案内して貰うというものです。
リビングだけでなく、寝室やバスルームまで紹介されます。
さり気なくチェストの上に置いてあるものなども、ブランド名や入手した経緯などを、マダムたちが語ります。
この番組を見ていて思うのは、皆、記憶力がいいなぁということ。
ブランド名や購入した場所などを、すらすらと話す出演者たちに驚いてしまいます。
彼女たちに比べれば、何万分の一ほどの持ち物しかないであろう私は、それがどこの商品かとか、どこで買ったのかなんて覚えちゃいませんが。
こうしたマダムたちの暮らしぶりは、自分とはかけ離れていて、生きていくのになんの参考にもなりませんが、エンタメとして楽しんでいます。
ドラマを見るような感覚です。
文芸評論家の北上次郎さんの訃報を耳にして、ショックの余りしばらく呆然としました。
とても哀しくて、寂しいです。
約20年前、私は作家デビューが出来たものの、不安な日々を過ごしていました。
小説は売れず、また評判にもならず、やっぱり私の書いた小説は面白くなかったのかと落ち込んでいました。

ある日、新聞の書評欄で私が書いた「ボーイズ・ビー」という小説が取り上げられているのを発見。
北上次郎さんの書評でした。
星が3つ付いていました。
5つが最高評価なので、まずまずぐらいの評価でしたが、私は飛び上がらんばかりに大喜び。
その書評が掲載されていたのは、僅か5センチ四方程度のスペース。
その小さな書評が私に勇気を与えてくれました。
本を読むプロである書評家が、たくさんある小説の中で選んでくれた奇跡に感動し、まずまずの評価を得たと勝手に解釈し、これを励みにしようと決めました。
その書評を新聞から切り抜き、クリアファイルに収めてデスクの引き出しに。
執筆中にはこのまま書き進めていいのだろうかと、不安に襲われることがあります。
そんな時、この切り抜きを引っ張り出しました。
そしてすでに暗記してしまっている書評を読み、心を強くして執筆を再開しました。
5センチ四方の書評が私の心の支えでした。
その後も発表した小説を、北上さんに取り上げて頂く幸運に恵まれました。
北上さんの書評では、あぁ、そこを汲み取ってくれたんだと嬉しくなることが多かったです。
また編集者も気付いてくれなかったシーンの重要性について、言及してくださったりして、凄いと思うこともしばしばでした。
登場人物についての分析を読んで、へぇ、そうなんだと、教えて貰うこともありました。
無自覚だったものを言葉にして貰って、そこで初めて理解出来たなんて経験も。
一度直接お会いして、お礼を言えるチャンスがあったらいいのにと思い続けてきましたが、それは叶いませんでした。
私の作品で最後に書評して頂いたのは「残された人が編む物語」でした。
熱い言葉で「読むべし」と推奨してくださいました。
どれだけ嬉しくて、ほっとしたかを伝えたかったです。
最新作「息をつめて」は読んで頂けたのか、どんな感想をもたれたのかは、わからないままとなりました。
これからは書評欄で北上さんの感想を、もう知ることは出来ないのだと思うと、寂しくてしょうがありません。
私のように北上さんの書評によって支えられた作家は、たくさんいるでしょう。
「あなたはたくさんの作家を育てましたね。それは素晴らしい功績です」と神様に評価されて、天国の中でも特に居心地のいいサロンのようなところで、特等席が用意されているのではないかと想像します。
そこには古今東西の本があって、読書三昧の日々を続けられる・・・そんな世界に旅立たれたのだと思いたいです。
北上さん、有り難うございました。
そしてご冥福をお祈り申し上げます。