友人A子が飼っているフレンチ・ブルドッグは、梅という名前のメス。
A子の家に行くと、「遊んで遊んで」と言わんばかりに私の足元に纏わりついてくる。
私はボールをキッチンの方に投げる。
梅ちゃんは喜び勇んでボールを追う。
そしてそのボールを銜えて戻って来る。
梅ちゃんの顔がもう1回と言っている。
しょうがないので私は再びボールを投げる。
これの繰り返し。
「もう飽きろよ」と言いたくなるほど、梅ちゃんは何度も何度もボールを投げてと、全身で訴えかけてくる。
どうして犬はボールを拾って戻って来ることが好きなのでしょう。
私にはどこに楽しみを感じているのか全然わからない。
でも要求されるので、A子とお喋りしながら延々とボールを放り続ける。
小さな体ではあっても梅ちゃんは体力がある。
梅ちゃんが疲れるまで私のボール投げは続くのです。
三十分後ようやく梅ちゃんはボールを追わなくなり、満足そうな顔で昼寝タイムに。
そうしてお喋りを楽しんだ私は帰ることに。
玄関へ向かい出すと、梅ちゃんがまた私の足元に纏わりついてくる。
その濡れた瞳は「帰っちゃうの?」と言っているようで、とても寂しそう。
「また来るね」と私は声を掛けるのですが、「そんなこと言って、すぐには来てくれないんでしょ」と、愛人かってぐらいの言葉を心の中で言ってそうな顔をする。
私はA子と梅ちゃんに同じくらい手を振って、別れたものでした。
先日久しぶりにA子の家に行くと・・・リビングの隅に梅ちゃんが。
クッションの上で寝そべっています。
走り寄って来てくれない。
近寄って頭を撫でると、少しだけ顔を上げてじっと私を見つめてきます。
梅ちゃんは老犬になっていました。
切なくて胸が疼きました。
飽きずにボールを追っていた梅ちゃんが、今ではおばあちゃんに。
皆年を取るのですが、犬の場合はそのスピードが人間より速いから、それを受け止めることが難しい。
最近はうとうとしている時間が多いとA子は言います。
そして一日でも長く、でも苦しまずに穏やかに過ごして欲しいとA子は語りました。
私もそうあって欲しいなと思います。
私の髪はうねっています。
昔はストレートパーマを掛けていました。
が、これは長時間美容院の椅子に座り続けなくてはいけないし、思いっきり引っ張られて痛い上に、髪が痛む。
このため数年前にストレートパーマは止めてしまいました。
今は外出前に、ストレートアイロンでうねりを伸ばす努力をする程度。
が、私の腕が悪いのか、うねりが酷いのか、希望しているほど真っ直ぐにはならならい。
たまにプロのヘアメイクさんにやっていただく機会があります。
お喋りをしながらも、私はじっとヘアメイクさんの手元を見つめます。
すると、私のうねりがあっという間に真っ直ぐになっていく。
なぜ?
私は尋ねます。
「そのストレートアイロンはどこのメーカーのですか?」と。
自分より上手な人を見かけると、まず道具のせいではないかと考えるのが、私のよくないところ。
ゴルフの上手い人を見かけると、「そのクラブはどこのメーカーのものですか?」と尋ね、字の上手い人を見かけると、「その万年筆はどこのメーカーのものですか?」と聞く。
大抵の場合、道具のせいじゃなく腕の違いなのですが。
ヘアメイクさんはにっこり微笑み「皆さん、動かすのが速過ぎるようですよ」と言う。
長時間あてていると髪が痛むという恐怖感があり、つい急いで動かしてしまうのが、ちゃんとストレートにならない理由らしい。
ふむ。
もっとゆっくり動かすべきなんですね。
更にヘアメイクさんからアドバイスが。
数を数えるようにしてみるといいですよと教えてくれました。
なんでも、1、2、3・・・と数を数えていくことで、スピードを落とせるようになるというのです。
私の髪の長さならまず頭の中で3等分する。
その3分の1の距離を、1、2、と数えていきながら、10で終わるぐらいのスピードでストレートアイロンを滑らせる。
次の3分の1の距離を、また数を数えながら10で終わるように滑らせる。
残りの3分の1の距離も、同じように数を数えながら10で終わるよう動かし続ける。
長い距離を30数えて動かすというのは難しい。
それよりも頭の中で分割をした短い距離を動かす方が簡単。
ということらしいです。
なるほど。
それ以来、1、2、3・・・10と洗面台の前で数えまくるように。
以前よりはうねりを抑えられるようになりました。
それでもやはりプロのヘアメイクさんがやってくれた時のように「うわっ。真っ直ぐじゃん」といった程にはならない。
うねりを抑える努力を私はやっていますといった程度。
素人の限界ですかね。
手足の指先が冷えます。
1年中冷えていますが、この時期は特に辛いです。
物心ついた時から、私はこの冷えと死闘を繰り広げてきました。
西で新商品が発売されたと聞けば購入し、東に温めグッズの噂があれば、その品を突き止めて試す。
そうやって生きてきました。
現在自宅で執筆中の際には、ブーツ型の湯たんぽを履き、首に巻くタイプの湯たんぽを膝に載せるという対処で、事なきを得ています。
問題は外出した際の手先足先の冷え。
手袋をしてタイツを履いて出掛けるのは勿論、バッグにはカイロをハンカチに包んだものを仕込んであります。
会議室や飲食店などでは、このカイロを包んだハンカチをぎゅっと握りしめることで、冷えとの静かな戦いを続けます。
一方足の指先の冷えについては、未だ私は負け続けています。
靴用のカイロや、インナーソールなどを試してきたのですが、キツくなるばかり。
痛みを我慢して履き続けても、肝心の指先は満足するほど温かくなってくれません。
先日友人A子と食事をしました。
個室は座敷でした。
ふとA子の足元を見ると・・・素足。
思わず悲鳴を上げてしまいました。
「寒くないの?」と尋ねると、「靴を履くと密閉されるせいか、熱くてしょうがないんだよね。靴下なんてとんでもなくって、一年中素足だね」とA子は答えました。
世の中にはそんな人もいるんですね。
神様、不公平です。
私がこれまでの冷えとの闘いを切々と語ると、A子は「大変だねぇ」と言いながらも笑顔いっぱい。
なんで笑うかなぁと文句を言うと、「一生懸命過ぎてちょっと笑える」とコメント。
これだもの。
手足末端冷え性じゃない人って、手足末端冷え性の苦しみを理解できないんですよね。
社会を分断するものは色々あると思いますが、手足末端冷え性と、そうじゃない人での分断も深い。
負けるな、冷え性。
たとえ理解されなくても、信じる道をひた走り、自分に合ったグッズを見つける旅を続け、いつの日か冷えを完全に追い払おうではありませんか。
手足の先は冷えていても、心は熱くして頑張りましょう。
友人A子の家に遊びに行くと、手作りマフィンがテーブルに。
料理上手の人って幸せそうに見えますよね。
A子も幸せそうです。
テーブルには黄金色の瓶が3つ。
A子は「好きなハチミツをマフィンに掛けて」と言い、黄金色の瓶を指差しながら味の説明を始めました。
ハチミツを3種類常備している家って、この世にあるのか? と私は腰を抜かさんばかりに驚きました。
雑誌やSNSなどで見かけることはあっても、ファンタジーだと思っていました。
我が家に現在ハチミツはありません。
身体にいいとどこかで聞いて、チューブ式のを買ったのは随分と前のこと。
何度かトーストに掛けてみたりした後、突然興味をなくし、使わなくなってしまいました。
ハチミツは冷蔵庫の奥へ奥へと移動。
その存在をすっかり忘れた頃、偶然に冷蔵庫の中で発見。
腐ってはいないだろうと、久しぶりにトーストに掛けてみようとチューブを押す。
が、すっかり硬くなってしまっていて、どんだけ手に力を入れても出てこない。
温めるしかない感じ。
でもチンするにしてもこのままではダメと思われ、別の容器に移し替える必要がありそう。
しかし別の容器に移す方法がわからない。
こうなるとハチミツの行き先は2つ。
冷蔵庫へ戻るかゴミ箱か。
しばし考えた後冷蔵庫へ。
これを何度かリピートした後、ゴミ箱へと進むことに。
ハチミツは私の手には余るのです。
それにひきかえA子は3種類のハチミツを見事に使いこなしている模様。
前から凄いヤツだとは思っていましたが、改めて尊敬。
端の瓶を指差し、これはどんな時に使うのかと尋ねてみる。
煮物の時に砂糖のかわりに使ったり、鶏肉を焼く前に漬け込むタレにそのハチミツを混ぜたりすると言うA子。
おお。
やはりしっかり使いこなしている。
丁寧に生きているように見えるA子に感化されて、自宅に戻り冷蔵庫の中をチェックしてみると・・・豆板醤の瓶やマスタードのチューブ、カットワカメ、刻み海苔の袋を発掘。
いつ買ったのか思い出せない。
買ったら使え。
使わないなら買うな。
と、自分に言い聞かせました。
多分料理って、発想を柔軟にして、いろいろなことに挑戦するのが上達への道なんでしょうね。