季節が進んで

  • 2021年10月21日

久しぶりにブーツ型の湯たんぽを使い始めました。

足先の冷え性である私は、このブーツ型湯たんぽを一年中使っていました。
夏は冷房を使用しながらも、足はブーツ型湯たんぽに入れているといった状態でした。
そんな私が1ヵ月近く、これに足を入れていませんでした。
引越しのバタバタで、精神が高揚していたのでしょうか。
足先の冷えをシカト出来ていたのです。

引越しのバタバタが終わり気持ちが落ち着いたせいか、急に足先の冷えを思い出しました。
そこでブーツ型湯たんぽにご登壇を願いました。

そういえば新居には床暖房の設備が入っているので、契約すれば利用出来ると聞きました。
その時「どうしますか?」と尋ねられたのでした。
いつでも好きな時に手続き出来るものならば、今はしない。
今冬を過ごしてみてから決める。
そう考えて「今は契約しません」と答えたのでした。
私にしては珍しく、まっとうな考え方。

いつもの私なら、勧められるまま契約してしまっていたでしょう。
その後で後悔するというのが、お決まりのパターンでした。
それがこの件に関しては、まっとうな考え方をすることが出来ました。
普段緩んでいるネジが、なにかの拍子でしまっていたのかも。

小説「僕は金(きん)になる」は父ちゃんの台詞で始まります。
それは「お前はまっとうに生きろ」というものです。

読み進めて頂ければ、この台詞の意味がわかってくるかと思います。
まっとうに生きたいと思っていても、まっとうに生きるというのは結構難しいものです。
人によって「まっとうさ」は違いますし、それは時代によっても変化しますしね。

父ちゃんの願いを、息子の守は叶えて、まっとうに生きるのか。
まっとうとは言い難い生き方をする父ちゃんの人生は、どんなものなのか。
こうした視点から小説を味わうのも一興かと思います。

行楽の秋、食欲の秋もいいですが、読書の秋も楽しんで頂きたいところです。

新居の照明が

  • 2021年10月18日

文庫「僕は金(きん)になる」はお手元に入りましたか?
まだの方は是非。

文庫は3年ほど前に単行本の形で発表した小説を、文庫版にして再発表するものです。
単行本は何度も推敲し、編集者や校正者のチェックを受けた上で発表します。
ですが、3年後に文庫版を発売する前にも改めて推敲します。

すると直したい箇所が山のよう出てくる。
3年前にはこれでいいと思っていた表現が、今は違うと思うのです。
でもなるべく直さないようにします。
綺麗な文章にはなるかもしれませんが、それによって書いた時の熱が失われることがあるから。
たとえ稚拙でも作り手の熱によって、気持ちが伝わる場合があると思うからです。

こうした作業が佳境の時期に、私は引っ越しという厄介なものを、クリアしなくてはいけなくなりました。
仕事に影響が出ないよう準備をしたつもりですが、私の考えは詰めが甘く色々な不具合が発生。

新居には照明器具がないと気付いたのは、引っ越し前日。
ハハッと笑うしかなかった。
内覧した時は昼間だったので、部屋の灯りのことまで頭が回りませんでした。
そしてそれまで使っていた部屋の灯りは、スポットライト的な特殊な照明器具で、それを新居では使えないだろうと気付いたのが、引っ越し前日。
新居で使える照明器具がどういうタイプかわからないので、慌てて買うことも出来ず、そのまま引っ越し当日に突入。
バタバタと走り回る一日。
そして新居に夜がやって来る。
キッチン、トイレ、浴室、廊下の灯りは、貸主が用意してくれていたので明るい。
部屋だけ暗いといった状態。

私にはチェックしなければならないものがある。
そこで廊下に座り込み、手元を懐中電灯の灯りで照らしてゲラをチェック。
その時「人生は完璧じゃない」という格言を思い出しました。

この「人生は完璧じゃない」の言葉は、昔観た映画の中のセリフ。
その映画の中で、偽造パスポートを受け取りに来た女性が、中身を確認すると名前の綴りが違っていた。
そこで文句を言うと、偽造パスポート屋の男が肩を竦めて言葉を返すのです。
「人生は完璧じゃない」と。
この偽造パスポート屋に修正する意思はなく、女性も結局諦めます。
本筋とはまったく関係ないワンシーンの中のセリフなのですが、妙に心に残りました。
それからトラブルに見舞われた時などに、この言葉を思い出すようになりました。
そうすると少しだけ気持ちが落ち着くのです。

廊下の灯りで原稿チェックすることになったのは、誰が悪いって、己のぼんくらさが悪いのですが、それを責めてもしょうがない。
人生は完璧じゃなく、自分も完璧じゃない。
だからこんなこともあるんだよ。
そう自分を慰めるのでした。

書店に並び始めます

  • 2021年10月14日

文庫「僕は金(きん)になる」が本日から書店に並び始めます。
地域によってすでに並んでいるところ、これからのところと、色々あると思います。
書店で見つけられない時には、書店員さんに尋ねてみてください。

この「僕は金(きん)になる」には、昭和から平成、令和と長い期間に亘る家族の物語が描かれています。
主人公は守。
弟の立場で、姉、父、母らを見つめます。

姉ちゃんはなにものにも、とらわれない自由人。
爪を切っている途中で飽きてしまって、止めてしまうような人。
注文したラーメンと大福が出て来たら、大福から先に食べる人。

この姉ちゃんの上をいくのが、父ちゃん。
娘に賭け将棋をさせてそのあがりで暮らし、自分は働かない。
競馬、競艇、パチンコを楽しみ、毎日ご機嫌で過ごしている。

フツーが服を着ているようだと言われている守が、この姉ちゃんと父ちゃんの生き方を、理解できるはずもない。
思春期の頃には二人の生き方を全否定し、こんな家族がいて恥ずかしいと思う。
そんな守も年を重ねて様々な経験をしていくうちに、家族に求めるものが変わっていく。
その変遷を味わい、守たちの人生をも味わって欲しい・・・そう願っています。

どうやって読む本を決めますか?
私は直感。
勿論、好きな作家の新作だからといった理由の時もありますが、装幀を見て帯の文句を読んで、直感で決める時が多いです。
スーパーで値段をじっくり見て検討する癖に、本の値段にはほとんど注意を払いません。
何故だかわかりませんが本の値段には寛容。
海外の翻訳小説を読むことが多いのですが、その価格は年々上がっています。
それでも今のところは値段を気にせず買っています。
出版社さんからしたら、こんな私はいい顧客だと思います。

子どもの頃、母親の買い物に付き合ってよく商店街へ。
そこには書店がありたまに母親が言ったのです。
「1冊だけ買ってあげる」
テンションマックス。
真剣に1冊を選びました。
子どもの頃の我が家は貧しかったのですが、時たま出る母親の大盤振る舞いに、大喜びしていましたっけ。

その時にも本の値段には、ほとんど注意を払いませんでした。
賢い子であればそんな時こそ、自分のお小遣いでは買えないような、高額の本を選ぶでしょう。
が、賢くなかった私は、その時読みたい本の方が良かった。

文庫「僕は金(きん)になる」は700円。
値段を気にしない方にも、気にする方にも、選んで頂ける値段になっていると思うのですが、いかがでしょう。

文庫「僕は金(きん)になる」が発売になります

  • 2021年10月11日

文庫「僕は金(きん)になる」が発売になります。
地域によってバラつきがあるのですが、10月14日(木)前後に書店に並び始める予定です。
ぜひお近くの書店などで探してみてください。

「僕は金(きん)になる」はある家族の物語です。
どこにでもいそうな家族とは、ちょっと違うかもしれません。
でも家族だからこそ苛ついたり、腹が立ったりする万国共通の感覚も描かれているので、特殊な家族の物語とは言い切れません。
あなたの家族との関係性とリンクする場面もありそうです。

この小説には将棋が出てきます。
主人公の姉ちゃんは将棋が滅茶苦茶強い。
だから父ちゃんは、姉ちゃんに賭け将棋をさせて、そのあがりで暮らしています。

将棋の対局シーンはありますが、ルールなどをまったく知らなくても、この小説は楽しめるようになっています。
なにせ書いた私自身が将棋に詳しくありませんから。
敷居が高いと思わずに、手に取って欲しいと願っています。

ブックカバーのデザインは、単行本とは変わりました。
単行本の装幀をとても気に入っていたのですが、文庫版はサイズが小さくなるため、見え方やアピールの仕方が変わります。
このため文庫サイズで最適になるようにと、このようなデザインになりました。

柔らかい雰囲気の中にも生き生きとした感じがあり、これもまた素敵なブックカバーですよね。

物語は昭和から始まり、平成、令和へと長期間に亘る家族の変化を描いています。
その中で主人公、守がどう成長していくのかも、見て頂きたい箇所です。
自分にもなにか才能があるのではないかと期待して、でもそんなことなくて、平凡を絵にかいたような人生。
うんざりしていたけれど、年を重ねるうちに、自分の平凡さを受け入れていく姿は、きっとあなたの心を動かすはず。

コロナによって自宅で過ごす時間が増えた中で、読書習慣を身に着けた方。
読書の楽しみを知った方。
ぜひこの1冊も味わってみてください。

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