先日書店さんを訪問させていただきました。
これ、ほぼ初なんです。

数年前「ボーイズ・ビー」の文庫をとても売ってくださっている書店さんがあるので、一緒に挨拶に行きましょうと、編集者から声を掛けて貰ったことがあります。
「喜んで」と答えて伺ったのですが・・・その日は、手書きのポップで応援してくださっていた書店員さんの休日だったため、お会いできずに帰って来たというしょうもない結末。
担当の書店員さんの休日をチェックせずに行動した編集者を、じっとりと見つめましたっけ。
これが初の書店さん訪問だったのですが、担当の書店員さんに会えずに終わったというオチのため、今回の書店さん訪問をほぼ初との表現にさせていただきました。
新刊が出る時には「私ができる販促活動があればなんでも言ってください。なんでもやらせていただきます」と申し上げているのですが、私はお呼びではないようで、書店さん訪問の要望が出ることはありませんでした。
今回新刊「総選挙ホテル」で書店さんを訪問する機会を頂戴できたのは、三省堂書店の神保町本店と、渋谷のHMV&BOOKSさん。
お忙しい中お時間を作っていただいて有り難うございました。
作品の話をさせていただいたり、お店の話を聞かせていただいたり、とっても楽しい時間でした。
書店は小学生の頃からずっと大好きな場所。
一歩足を踏み入れれば、一気にテンションが上がります。
私にとっては、テーマパークよりもわくわくする所。
大好きな場所に変わりはないものの、作家になってからは感じ方が少し変わりました。
大量の本を前にして、ここで私の小説と出会うというのは、奇跡が起こらないといけないぐらいの確率なんだと改めて思い知ります。
そう思った瞬間ちょっと頭がくらっとします。
今では書店は読者とのご縁を結び付けてくれる場所といった思いが強く、手を合わせて拝みたくなるような気持ちです。
三省堂書店の神保町本店さんと、渋谷のHMV&BOOKSさんでは、「総選挙ホテル」にサインをさせていただきました。
よかったら店内でそのサイン本を見つけてみてください。
映画「嫌な女」の公開が始まりました。
すでにご覧いただいたでしょうか?
それともこれからでしょうか。
映画の公開に至るまで、とてもとてもたくさんの人たちのサポートを頂戴しました。
新刊を出すと、しばしば映像化のオファーをいただきます。
これは私に限った現象ではなく、他の多くの作家の皆さんも経験されていることです。
時には発売前の段階で、映像化の話が入ることもあります。
恐らく刊行予定の情報をチェックされたのでしょう。
そこにある小説の宣伝文句やあらすじだけを読み、唾を付けておこうとの考えのようです。
映像化の話があっても、実現まで辿り着くのはごくごく僅かです。
大抵途中で頓挫します。
大きなお金が必要な映像化の場合、資金集めはとても大変です。
またたくさんの団体、大勢の人の承諾を得ていかなくてはなりません。
映像化を実現させようとするならば、苦労を背負う覚悟が必要です。
「嫌な女」の映画化を実現できたのは、黒木瞳さんの熱意があったからです。
その熱意が大勢の人の心を動かし、多くのサポートを得られたのだと思います。
諦めず、熱意を持ち続けて実現に向かって走り続ける・・・言うは易し行うは難し。
それを黒木さんはやってみせてくれました。
その努力する姿勢を目にし、感謝で胸がいっぱいになりました。

感謝の気持ちを捧げたい人は、ほかにもたくさんいらっしゃいます。
元々は「こんな小説を書きたいのだけど、どうだろう?」といった話を、編集者にしたところからスタートしました。
面白そうと言ってもらい、書き始めたものの、時に筆が止まったり、迷ったりしました。
そうした時、気長に待つだけでなく、励ましてもいただきました。
単行本として発表するまでには、また大勢の方のサポートをいただきました。
デザイナーさんや営業、制作、宣伝といった部署の人たちの協力を得た後、書店でもまたたくさんの人のサポートを貰いました。
ポップを作って応援してくださった書店員さん、面白いとツイートしてくださった書店員さんもいました。
いい作品だと取り上げて紹介してくださった文芸評論家の支援も有り難かったです。
そして、本を読んだ方たちが感想を広げてくださり、次の読者への繋がりを作ってくださいました。
映像化に向けて動き出してからもたくさんのサポートを頂戴しました。
ライツの皆さんの働きなくして、今回の実現はなかったでしょう。
黒木さんのマネージャーさんの粘り腰も大きな力となりました。
映画会社の皆さん、出資してくださった企業の皆さんからも応援をいただきました。
まだまだここに上げ切れなかった大勢の人の支援をいただきました。
多くの皆さんに愛された「嫌な女」はとても幸せものだと、今つくづく思います。
どうも有り難うございました。
まだ小説「嫌な女」を読んでいない方は、映画を観る前に、或いは観た後にぜひ。
すでに読んだという方は、「女シリーズ」の第二弾「我慢ならない女」を。
小説のプロットを立てる時、同時にキャラクターも考えます。
どんな性格か、年齢、家族といった基本的なことは勿論、細部も作っていきます。
どんな家や部屋に住んでいるか、普段どんなファッションをしているかも大事な要素です。
容姿も決めますが、どこかに絵を描いたりはしません。
私の頭の中に像を収納するだけです。
どんな趣味かを考えるのは結構楽しい。
バードウオッチングにするか、ボウリングにするか、あれこれ考えます。
そしてこれにしようと決めたら、そこから猛勉強。
大抵その趣味をもつ人たちのための雑誌や本が出ているので、それらを買い漁り、それのどういった点が魅力なのか、どういうところが難しいところなのかを学びます。
これ、主な登場人物の数だけありますから、勉強するまとまった時間が必要になります。
趣味雑誌はとにかく面白いのですが、特に後ろのページがいいんです。
たとえば読者からの質問に、誰かが回答するページ。
そんなことが疑問なんだぁと、まず質問自体にびっくりし、それに真面目に解決策を提示してくれていることにまたびっくり。
その趣味の人たちがどういったことで困り、それはどうしたらいいのかといったことまでわかるので、とても勉強になります。
こうした雑誌の広告ページも興味深い。
以前ボウリングの専門雑誌を見ていたら、マイボールを作ってくれるショップの広告を発見。
さらにグローブのオーダーをしてくれるショップも。
言われてみれば、プロボウラーって手袋してますよね。
その道を突き詰めていくと、やはりオーダーという領域に入っていくんでしょうかね。
バードウオッチングの専門雑誌には、どこにどの時期に行けば、どの鳥を見られるといった情報が載っていました。
さらに鳥の生態が詳細に紹介されています。
あるんじゃないかと思って探したら、やはりありました。
読者の投稿写真を紹介するページが。
鳥を愛する人は、その姿を形に残したいと思うはずとの読みが当たりました。
ということは・・・と探すと、ありましたね。
双眼鏡の広告が。
カメラの広告も。当然望遠レンズの広告も。
趣味を突き詰めていけば、必要な道具が欲しくなるってもんです。
やっぱりねと思いながら見ていると・・・録音機材の広告ページと出くわしました。
高感度だというそのマイクで、鳥の鳴き声をクリアに録音できると謳っています。
どうやら、鳴き声を録音したくなる人がいるようです。
そこまでは想像できていませんでした。
趣味の世界は奥が深いです。

新刊「総選挙ホテル」に登場する支配人の趣味がバードウオッチングです。
小さな鳥が子育てをしているのを眺めるのが好きで、朝早い時間に公園でバードウオッチングを楽しみます。
支配人が働いているホテルは上手くいっていなくて、大きなストレスを抱えています。
売上が減っていくなかいろんなことをやってみても成果が出ず、焦りを募らせます。
そんななかしばし、鳥の営みを見つめ、心を潤します。
登場人物の趣味は、時にその性格や人生観を表してくれます。
支配人の人間性が表現できていればいいのですが。
作家稼業の中で1番しんどいのは、文庫を出すための作業です。
3、4年前に単行本として出した小説を、文庫という形態に変更して出すためには、改めて自分の原稿を読み直さなくてはなりません。
これがメンタルにくる。
書いた時は最善だと思って使った言葉、表現でも、3、4年後に読み直してみれば、未熟さが目に付く。
なぜこういうシーンにしたんだろうと、物語の構成への不満も。
ああすれば良かった、こうすれば・・・と後悔と自分への失望感でいっぱいに。
へこみますし、すべてを書き直したくなります。
探さないでくださいと置手紙でもして、旅に出たいところです。
が、無理矢理考え方をポジティブ方向へと動かします。
確かに未熟ではあっても、この時にしか書けなかった物語だったんだと、肯定的に考えるように仕向けます。
そうしてなんとか文庫という形で発表させていただきます。
文庫「我慢ならない女」も、そうやって完成させました。
「嫌な女」から始まった女シリーズの第2弾です。
「嫌な女」は25日から映画の公開が始まります。
この「嫌な女」はNHKBSドラマとして放送され、そこには映画「嫌な女」の監督をされた黒木瞳さんが、徹子役で出演されています。
こちらのDVDは24日に発売です。
文庫、映画、DVDと様々な入口がありますので、興味のあるところから入っていただき、そこから次へと移っていって、それぞれを楽しんでいただければと思います。
同じ小説を基にしていても、アプローチの仕方で全然味わいの違う作品になるというのが面白いですね。
「我慢ならない女」ではひろ江と明子の物語が、「嫌な女」では徹子と夏子の物語が展開されます。
どちらも長い年月に亘る関係性を描いています。
人生を丸ごと描くというなかなか大変なトライをした作品でもあります。
ぜひ味わってみてください。