笑顔

  • 2016年04月25日

まだ余震が続き、怖い思いをしている方が多いと思います。
そんななか激しい雨が降るなど、自然はなんて残酷なんだろうと恨めしさを覚えます。

終わりの見えない避難生活はしんどいでしょう。
これからの生活を考えれば、不安が大きく胸に溢れるでしょう。

「頑張って」なんて気軽に声を掛けられる類のことではないと重々承知していながら、それでもやはり「頑張って」と言いたくなってしまいます。
被害に遭われた方たちが、一刻も早く元の生活に戻れますように。

あるボランディア団体に所属している友人がいます。
その友人はとても困難な状況になっている世界各地に行き、援助活動をしています。
そうなった理由は自然災害だけではなく、人間がしでかしたせいでのこともあるようです。

大変な活動をしている友人に、以前聞いたことがあります。
そんな状況下では、援助する側も同じようにしんどいのではないのかと。
すると友人は、どこへ行く時も必ずサッカーボールを1つ持って行くと言っていました。
ちょっとしたスペースを見つけて、援助活動の合間に、仲間同士でサッカーボールを蹴るのだそうです。
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すると、大抵現地の子どもたちが参加したがるので、一緒に遊ぶと言うのです。
そのうちそれを見ていた現地の大人たちから応援の声が上がる。
やがてそこには笑顔が溢れ、歓声が響く。
それまではそこにあったはずの日常が蘇るのだそうです。
だからといって、過酷な状況が激変するわけではないのですが、少しの間だけでも笑ったり、喜んだりすると、その場の空気が明らかに柔らかくなるのだと友人は断言していました。
そしてこのひと時があるから、こっちも乗り越えられると。

その友人から見せて貰う写真の中には、悲惨な現実だけじゃなく、サッカーボールを抱えて楽しそうに笑う子どもたちの姿も。
それは未来を信じさせてくれる笑顔です。

験担ぎ

  • 2016年04月21日

験担ぎをするのはスポーツ選手だけではないようで。
様々な験担ぎをする友人もちらほら。
「日曜日には爪を切らない」という験担ぎをする友人がいます。
なんでも日曜日に爪を切ったら、よくないことが起こったそうで。
それはどんなよくないことだったのかと尋ねると、「それは覚えていない」とのこと。
あまりに昔で、一体自分にどんなよくないことが起こったのかは覚えてはいないが、日曜日に爪を切らないと決め、それを20年ぐらい守り続けていると言います。
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財布を毎年春に買い替える友人もいます。
ただの飽き性ではなく、ほかのモノは何年も大事に使うのですが、財布だけは年に1度買い替えた方がいいと、どこかで誰かが言っていたそうで、それを信じているそうです。
この「春」は「張る」と掛けてあって、財布にお札が大量に入った状態の「張る」ようになるよう「春」に買うといいとの根拠になっているそうで。
シャレかい。
とのツッコミがあろうかと思います。
当然私もツッコミましたが、真面目な顔で「そうそう、シャレ」と頷く友人がちょっと心配になりました。

カルガモの親子がどこかの通りを渡り、無事に池に到着できるかが話題になったことがありました。
同僚の男性が、無事に渡れる日まで肉断ちをしているとの噂を耳にした時の、私の驚きったら。
それは験担ぎの範囲なのかとの疑問もあろうかとは思いますが。
その男性に「どうして肉断ちを?」と聞くと、「僕が肉を食べないと、いつも幸せなことが起こるから」と回答が。
ん?
「じゃあ、ベジタリアンなんですか?」と重ねて尋ねると、「いや、肉は好きでよく食べる」と言うので、「幸せになるとわかっているのに、肉を止められないんですか?」と確認すると、「そうなんだよね」と彼は答えました。
でもカルガモの親子のためには肉断ちができるそうで。
もうなにがなんだか。
験担ぎってそもそもなんだっけと、考えさせられました。

そういう私はどんな験担ぎがあるかというと・・・ない。
ちっちゃいことならあるんじゃなかろうかと必死で考えてみましたが、見当たりません。
自分で決めた験担ぎに振り回されている様子の人を見ると、大変だなぁと思いますが、そうしたものがないというのも、なんだか人生の可笑しさを味わっていないようで寂しい気もします。

ベッドで本を

  • 2016年04月18日

OL時代、同僚が1冊の本を貸してくれました。
お勧めだと言って。
頼んでもいないのに。
これがとんでもないことになろうとは、借りた時にはまったくわかっていませんでしたから「サンキュー」なんて極楽にお礼を言ったりしていました。
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ベッドに入り、寝る前にちょっとだけ読んでみようかとその本を開くと・・・サイコものの小説でした。
私は怖がりなので、小説は勿論映画やテレビドラマなども、こういった類のものは避けて通るようにしていました。
なのに、本を読み始めてしまったのです。
主人公は男性で、女性に監禁されてしまいます。
この女性が次になにをしでかすかがまったく予想できない。
それが恐ろしくてしょうがない。
だからもう本を置いて眠ってしまおうと思うのですが、目を瞑れば、その女性が私を襲ってくる映像が浮かんでしまいます。
物語が少し落ち着くまで読んで、ドキドキが治まってから寝ようと決めてページを捲るのですが、これが全然落ち着かない。
スリルがずっと続く。

主人公が監禁されている女性の自宅に、なにも知らない人がやって来るシーンが出てきました。
主人公は限られた条件の中、必死でその人物に自分の存在を知らせ、助け出して貰おうとします。
もし失敗すれば、その後女性からさらに酷いことをされるとわかっていても、それが最後の頼みの綱と思い、行動を起こすのです。
早く眠りたい私は、主人公と一緒にドキドキしながら「気付いてくれー」と心の中で叫び続けます。
「ほらほら、早く、あとちょっと」と主人公に声援を送ったりもして、アドレナリン大放出。
で、あとちょっとのところで失敗。
がっかりの気持ちがハンパない。
これに成功したら本を閉じ、眠れると思ったのに。

結局本を最後まで読み切りました。
その時午前7時。
もう出勤の準備を始める時間になっていました。
完徹です。
学生時代試験前だって完徹なんてしたことのなかった私が、とんだ目に遭いました。
出勤し、本を貸してくれた同僚に「この目の下のクマを見てよ。一睡もせずに読むはめになったじゃないの。こういう類の本だって事前に教えてちょうだいよ」と文句。
同僚は「ひゃひゃひゃ」とウケていました。

こういう悪ふざけはやめてくれと思う一方、この作家の凄さに改めて驚嘆します。
本を閉じさせないほどの迫力と、スピーディーな展開。
夢中にさせる手腕と描写のリアル感。
こんな風に読者のハートをぐっと掴んで離さない作品を書けるようになりたいと思っています。

ボーナス一括払い

  • 2016年04月14日

友人と買い物に行きました。
別の友人へのプレゼントを二人で選び、ランチをした後、ブラブラとウインドーショッピングをしていると・・・。
友人がパールのネックレスに一目惚れをした様子。
が、それは「いち、じゅう、ひゃく、せん・・・」と桁を数えていかないと金額がわからないほど、値札にゼロがたくさん並んでいる。
私だったら迷うことすらないぐらいの高額の品に、友人は熱い視線を注いでいます。
「最高級の品なんですよ」と言う店員さんはさらに「ボーナス一括払いもできますよ」と悪魔の囁き。
迷い出す友人を見ていて、ふとOL時代のことを思い出しました。

OLをしていた頃、突然会社から今度の夏のボーナスは現物支給になると言い渡されたことを。
最初聞いた時、意味がわからず周囲の人に「なに? どういうこと?」と聞き回りました。
働いていたのは靴のメーカーでしたので、工場に靴があります。
この靴をボーナスとして支給するというのです。
ね、よくわからないでしょ。

たとえば・・・ボーナスを10万円貰う予定だった社員は、現金を銀行口座に振り込んでは貰えない。
その代りに、自社工場にある10万円分の靴と交換できる商品券を、支給しましょうということ。
これはつまり、友人に靴を買って貰うよう頼みなさいってことなんですね。
持っている商品券を使って1万円の靴と交換したら、それを友人に1万円で売ったら、そのお金はあなたのものになるという論理。
理解するのに時間がかかってしまいました。
気の毒がって友人たちがこぞって靴を買ってくれたので、私は予定していた金額分を手にすることはできましたが、なかにはなかなか買ってくれる人を見つけられない社員もいて、大騒動が続きましたっけ。
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パールのネックレスを買うかどうか思案中の友人を眺めながら、彼女に現物支給の心配はないだろうかと考えていました。
友人が意を決し財布からクレジットカードを出そうとしたので、思わず私はその手を掴み「ボーナスはちゃんと現金で出る?」と確認しました。
目を真ん丸にした友人はすぐに、私が経験した現物支給のことを思い出したのでしょう。
その瞳が一瞬揺らぎました。
彼女は靴を買ってくれた友人の一人でした。
しかしすぐにしっかりと頷き「大丈夫だと思う。会社の売り上げは伸びてるから」と答えました。
なによりです。

帰りの電車の中で、友人は大事そうにパールの入った買物袋を抱え、興奮した様子をしていました。
幸せそうな友人を見ていて、私まで幸せな気持ちになりました。
とはいうものの、ボーナス一括払いで購入する時には、なにが起こるかわからないということも頭の片隅に置いておくようお勧めいたします。
ま、ボーナスなんてない身の私には、その言葉自体に憧れちゃいますが。


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