私の指先にはなにかある。
恐らく指先からなにかが染み出ている。
だからキーボードの文字を消してしまう。
キーボードの上には、アルファベットや数字などが印刷されていますよね。
それが消えていくのです。
こんな感じに。

一番初めに消えたのは「K」でした。
使用頻度からいえば、母音が圧倒的に多いはずです。
「あいうえお」に対応するアルファベットなので、「AIUEO」ですね。
なのに、「K」が消え始めて首を捻りました。
次に消え出したのは「N」でした。
その次は「M」。
そして今は「A」と「S」と「O」が消え始めています。
この順番が謎です。
昔フリーライターをしていた頃、ある代理店が大勢のライターを募集しました。
知り合いに誘われた私は、時給の高さに惹かれて参加することにしました。
部屋に集められたライターたち。
約1ヵ月間の仕事内容が責任者から知らされます。
聞いてみたところ、ライティングというよりは、入力作業に近いんじゃないのかといった仕事内容でした。
でもまぁ、ギャラがいいし。
と、私をはじめ多くのライターが思ったようで、誰もなにも言いませんでした。
別室に案内されると・・・広い部屋には100台ぐらいパソコンが並んでいる。
責任者が言います。
どこでも好きなところに座って、作業を始めてくださいと。
すると20人ほどの人たちが、ダダッと走り出しました。
そして一番奥のパソコンへ向かいます。
へ? どうしてそんなに奥に行きたいんだろうと、私は不思議に思いました。
私はすぐ近くの席に座りました。
さてと、とキーボードに目を落としてびっくり。
キーボードが真っ白。
文字も数字もなにも書かれていない。
変なパソコンを選んじゃったと動揺し、席を移動しようと思いましたが、時すでに遅く空いている席はありません。
私は首を伸ばして責任者を探しました。
その時、隣席の同年代らしき女性が言いました。「奥にある10台のパソコン以外は全部、キーボードの文字は消されているのよ」と。
「なんでですか?」と私が問うと、「短時間で大量に入力させたいから、それにはブラインドタッチで入力させる必要があると考えたみたい」と、その女性は答えました。
なんでも、そこに答えがあると思うから、人はそこに目を向けてしまう。
つまりキーボードに文字があると思うから、画面から目を離してキーボードを見てしまう。
でも見てもないとわかれば、やがて人は見なくなる。
そうすると画面から目を離して、キーボードを見なくなる。
画面とキーボードの間で目を行ったり来たりさせずにすむと、その分時間を短縮出来る。
入力作業のスピードが上がる。
と、こういう考え方で、キーボードに印刷されていた文字や数字をすべて、わざと消したそうなのです。
すげぇところに来ちまった。
そう思いました。
その女性は2ヵ月前にもそこで働いたことがあり、こうした事情を知っているのだと言いました。
同様にそうしたことを知っていた人たちが、文字が消されていない、フツーのキーボードに向かって走ったのかと納得。
当時の私は、視線を画面とキーボードの間で行ったり来たりさせて入力していました。
そういうものだと思っていたし、そこまでスピードを問われるようなことはなかったのです。
その日何度キーボードに目を落とし「あっ、ないんだった」とがっかりしたことでしょう。
入力スピードが上がるどころか、いつもよりかなり遅くなっています。
こうして無理矢理ブラインドタッチをさせられる羽目に陥り、なんとか出来るようになったのは3日目から。
ブラインドタッチに慣れてみれば、その方が目が疲れないといった利点に気付きました。
今になるとこのスパルタ的指導には感謝しています。
こうしてブラインドタッチを習得した私は、指からなにかが出ていて、キーボードの文字を消しても平気な女になれたので。
それにしても私の指先から出ているものはなんだろう・・・。
1日に何通ものDMを受け取ります。
購入したことがあるネットショップから、新商品が入荷しましたといった案内です。
しかし断捨離中の私はスルー。
ところが。
最近になってDMの内容が変わってきました。
あなたにだけ特別価格で販売しますというのです。
「通常のセール前だけど、あなたにだけは特別にセール価格で売っちゃうわ」と誘ってくる。
この誘惑をスルーするのはちと難しい。

見るだけ。
見るだけなら断捨離に違反しないでしょ。
と、誰も聞いていないのに言い訳をして、メールに記載されていたアドレスにアクセス。
すると確かに安くなっていました。
ふと思い付いて、そのブランドの名前を検索窓に入力し、それで出て来た公式サイトにアクセスしてみると・・・これまで通りのページで、値段は定価になっています。
裏では値段を下げて売ろうとしていることなど、おくびにも出さず、しれっと定価販売をしている。
この時期に定価で服を買ったことは何度もありました。
同じ品を、他の人はセール価格で買っているかもしれないなんて思わずに。
胸に溢れるのは、なんか勿体ないことしたなという思い。
靴店で働いていた時には売る側として、セールに関わりました。
今よりは遅く、確か7月下旬ぐらいからのスタートでした。
小さな店は普段1日の来店客は数えるぐらい。
それがセールの時期になると、どこからやって来ましたか? というぐらい大勢の人がやって来る。
客層は明らかに普段とは違っています。
でも中には定価で買ってくれるお得意様も。
ある年のセール売り場に私が立っていると、そうしたお得意様から言われました。
「これ、先週定価で買ったわ。口惜しい」と。
す、すみません。
あなたが買ってくれた時、あと1週間待てば30%オフになるのにと思い、胸が痛みましたと告解したいところですが、申し訳なさそうな顔をするだけに留めました。
その時思ったのはセールをすると、失うものもあるということでした。
まず信頼を失う恐れがあるし、やがてはセールを待って買うようになってしまう危険性も、生まれますよね。
値引きはせず、定価で売り続けるのは難しいんでしょうかね。
私が売っていたそのフランスの高級ブランドは、その後なくなりました。
倒産したのです。
あなたにだけ特別価格でというDMを貰った私は、これからはもう6月になったら、定価で服は買わなくなるでしょう。
どうせもうすぐあのDMが届くわと、特別セールを待つようになるだろうから。
それでもメーカーとしては、やらざるを得ないんでしょうかね。
今のところ誘惑には乗らず服の購入はしていません。
断捨離を続行出来ている自分を、褒めてあげたいです。
なるべく小麦粉を使った食品を摂らないようにしています。
そうすると、どうなるか。
パン、パスタ、うどん、ピザ、ラーメン、焼きそばなどを食べなくなります。
このミッションを開始した時、果たして我慢出来るだろうかと疑問に思いました。
どうしても食べたくなり、禁断症状が現れるのではないかと予想していました。
ところが。
意外と我慢出来ちゃいました。
それはミッションを始めてみたら、どんどん体調が良くなっている感覚があり、食べて体調が戻ってしまうのを避けたい気持ちが強かったから。
でも。
心の奥底から湧き上がって来る気持ちに気付きました。
それは啜りたいという欲求です。
自分の中にこれほどまでに、啜りたいという欲望があったことに驚きました。
小麦粉を摂らないようにするとパスタ、うどん、ラーメン、焼きそばといった麺類を諦めなくてはいけなくなり、しばらく啜るという行為をしなくなっていました。
これが驚くほどメンタルにくる。
だったら蕎麦を食べたらどうか・・・と思いましたか?
そうなんです。
私もそう考えて蕎麦を手に取ってみたのですが、ツナギに小麦粉を使用しているものが多いのです。
んー、残念。
「啜りてぇなぁ」と空を見上げて呟く毎日を過ごしていたところ、閃きました。
春雨だ。
春雨って確か原料は小麦じゃかったはず。
ネットで調べると緑豆や、エンドウ、ソラマメなどの豆類のでんぷんを、原料としているとありました。
ジャガイモやサツマイモなどのでんぷんを、原料としたものも多いと書いてあります。
これならイケる。

早速買ってみたものの料理方法が思い付かず、レシピ検索。
すると多くのレシピが出て来て、割といろんな料理に使える食材だと知りました。
見つけたレシピを参考に作った春雨のスープを啜る。
思いっ切り啜る。
そして気が済むまで啜り続けました。
胸に広がる満足感。
私はこれから春雨と共に生きていこうと誓いました。
これまでの人生の中で、正直春雨の存在感は薄かった。
あなたの存在を意識しなかった私を許して。
スーパーだと乾物が並ぶ棚にあるのだろうと思うのですが、そこって、これまであんまり立ち止まらないエリアでした。
これはネットスーパーでも同じで、乾物のところをクリックしないので、選択肢に入ってこなかった。
更に特売品や広告の品などが並ぶ特設ページに、春雨を見掛けたこともなかったため、すっかり意識から消えていました。
啜りたいとの思いを叶えてくれる春雨に感謝し、レパートリーを増やしていこうと思います。
それにしても、いろんな欲望があるもんですね。
毎朝、起きるとまずするのは、スマホの電源を入れること。
それからスマホでラジオを聞きます。
食事の支度や、歯磨きやら、色々とやらなくてはいけないことが目白押しの朝の時間帯。
情報収集は目からではなく耳からに限定しておきたいので、ラジオはとっても便利です。
祝日やゴールデンウイークなどになると、いつもとは違う番組になります。
そんな時に楽しみにしているのが、NHKラジオの「子ども科学電話相談」。
子どもからの質問は「それ、私も知りたい」といったものばかりで、講師陣の回答を聞くのは勉強になります。

質問はジャンル別になっているのですが、そこに「恐竜」というジャンルがあるのに驚きます。
それだけ質問が多いのでしょう。
恐竜への質問をしてくる子どもたちのほとんどが、男の子。
たまーに女の子の質問が取り上げられることもあるのですが、ほぼ男の子たちばかり。
何故男の子たちは恐竜が好きなのか?
絶滅してしまった動物への哀愁か、大きいってことが好きなのか・・・不思議です。
この番組で子どもたちからの質問を受ける講師陣は、個性的です。
中には話がどんどん横道に逸れていく講師が。
相槌を打つ子どもの声に、飽きが入っていくのがわかる。
聞いている私も集中力が切れて飽きてくるのだから、子どもだったら尚更でしょう。
こういう先生って、いましたよね。
こういう先生の授業って、本人が思うほど生徒たちから人気がないものです。
司会者のアナウンサーが「〇〇君、わかりましたか?」と聞くと、もうメンドー臭くなった子どもが「わかりました」と答えて、話を終わりにしようとするのを耳にする度、こんな幼い頃から、諦めるということを知っているなんて凄いなと思います。
小中高大で、様々な教師の授業を受けてきました。
この先生の授業は面白いと思ったのは、残念ながらごく数人。
ほとんどの教師は教科書に沿って、内容を教えるだけでした。
面白い授業をしようとか、興味をもたせようといった考えの教師には思えませんでした。
と、まるで私は授業が面白くなかったのは教師のせいで、だから成績が悪かったのは教師のせいといった展開に、もっていこうとしているかのよう。
でも同じ授業を受けていても、しっかりと理解して、好成績を収める生徒たちはいたのですから、楽しい授業にしてよなんて望んでいること自体がダメなのかも。
理解出来なくても、話がつまらなくても「わかりました」と言える電話相談の子どもたちのように、もっと大人でいるべきだった・・・と、今頃反省しています。